運命の女神 | ナノ

1901
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「…、」

退院した陽毬が家の中で一冊の本を取った。

“運命の女神”

以前読んだところまでページをめくると、次のページを開く。

「…ずっと、ずっと昔の話し…?」




ずっとずっと昔の話し


神様には親友がいました。

世界の運命を司る神、それは運命の女神。

神様が寂しさのあまり作った神でした。



運命の女神はいつも言っていました。


「さぁ誰を愛そうか」


運命の女神はとても気まぐれな神様でしたが、

運命の輪を乱す事はありませんでした。


ですが運命の女神はある日突然運命を乗り換えてしまいました。


神様は運命の女神に激怒し、地上に追放したのです。


そして運命の女神は罰を受けたのです。


その罰はとても苦しいものでした。




「罰……?」

陽毬の瞳は細くなると、ゆっくりと本を閉じた。

最後のページに書かれていた文は読まなかった。

「一体、どんな罰を、受けたの…?」

「苦しい罰を受けたの」

「!?」

誰もいないはずの家の中、見知らぬ声が響いた。

視線を上げれば目の前にいた少女の姿に唖然とする。

――銀色の髪

――――真紅の瞳

――美しい容姿


きっと彼女が運命の女神だ、

陽毬は息を飲み込むと、少女に向かって口を開いた。


「貴方は…神様なんですよね」

「…違うよ、私はもう神ではない」

少女の輝く真紅の瞳の中に金色の光が光った。

「でも、運命を操る力を持っているんですよね…お願いします、私のお願いを聞いて欲しいんです」

「…運命を変えて欲しいの?」

陽毬の動きが止まると、瞳が細まった。

雨が降り出した外には洗濯物が出したままだった。

「…みんな幸せで、また三人でずっと暮らしていたいの…私はもうすぐ…、」

「そうだね、貴方の運命はずっとずっと前に決まっていた」

少女は小さく息を吐くと、部屋の中にある陽毬とその兄弟がうつっている写真を見つめた。

楽しそうに微笑む三人の子供たち、

「思い出したの……貴方との、約束を」

「約束?」

「したんだよ…ずっと、前にね…」











   

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