運命の女神 | ナノ
17011/3
「何者にもなれないお前たちに告げる!」
ドレスアップした陽毬は二人に指を指すと、
「このままピングドラムを放置すればお前たち家族の誰かが大きな罰を受けることになる」
「罰…?」
「お前たちが一番大切なものが損なわれるのだ」
「(大切なもの…まさか、陽毬が?)」
晶馬の頭に中に浮かぶのは、大切な妹の姿だった。
「……恋だの愛だのに構っている暇はないぞ」
「…なんのことだよ」
いつのまにか近くまで来ていた陽毬の瞳を見つめると、すかしたような顔で返される。
「兄弟で呪いをかけられるとはな」
「……は?」
“兄弟”で、その言葉に晶馬は瞳を丸くした、同時に自分の兄である冠葉に目線を向ける
「晶馬、お前…運命の女神とどう関わってる」
「……なに、いいだすんだよ」
「あいつを殺せば、陽毬は助かるんだ…その大きな罰も受けずに済むはずだ」
冠葉のたんたんとした言葉に晶馬は眉を寄せた。
「僕は、あの子を殺せない…、」
「お前も…呪い、か」
「…冠葉?」
晶馬の脳内で、あの子との会話が浮かぶ。
僕とあの子は一つになった。
彼女を縛る呪いが憎い。
彼女を苦しめる呪いが、どうしようもなく悲しい。
禁忌を犯した僕ら。
ひとつになった僕は呪いをうける。
―呪いを受けるか、彼女を殺すか。
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