運命の女神 | ナノ

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「僕は、やっぱり荻野目さんとは一緒にいられないし、優しくもなれない

僕らと君の家族はそうゆうふうにしかなれない運命なんだよ」

「晶馬君がそう言っても私はあきらめないから、だって私は晶馬君のストーカーなんだもの。

私は運命を変えてみせる」

そう言い放った荻野目さんの顔を見ることはできなかった。

きっと運命は変えられない。

それが僕たちの罰なのだ、両親の罰なのだから。

息子である僕は罰を受けるべきなのだ。

「じゃあ、またね」

小さく笑って電車を降りた荻野目さん、何も言うことはできなかった。

ただ誰もいない車両の中でぼんやりと考える。

「はぁ、」

瞳を閉じて、再度瞳を開けると目の前に座っていた人物に思わず目を瞬きさせた。

「君はっ」

それは運命の女神。

彼女は変わらぬ表情で僕を見つめると、小さな唇を動かした。

「高倉晶馬。」

小さな声なのにはっきりと聞こえた自分の名前、

彼女の瞳は閉じられると、またゆっくりと開いた。

「貴方は私と一つになった。」

「……うん。」

「それは禁忌だと教えたでしょう」

「…そう君は言っていたね」

僕と一つになること。それは禁忌だと。

誰がそう定めたのか、僕は知らない。

でも僕らを縛るものと同じような気がした。

「君を縛るのは、その禁忌?」

「違うわ」

はっきりと答えた彼女は小さく笑って、胸に手を当てた。

そしてぎゅっと拳を固めると、その視線は僕に向く。

揺れた心臓が騒ぎ始めた。鼓動がゆっくりと早くなっていく。

「私に与えられた罰はもうどうしようもない。

でも、私を縛るのは、呪い」

「呪い…?」

「そう、呪い。私と一つになった貴方は、この呪いを受けることになる」

微笑む彼女の笑顔は美しかった。

見たことのないその笑顔だったが、それはひどく胸を苦しめる。

ぐさり。ぐさり。彼女が笑顔を見せる度に心臓に突き刺さるものは

抜けない。

そのまま僕を苦しめる。

「選びなさい。この呪いを受けるか。それとも私を殺すか」

その言葉を聴き終わったときには、

彼女の姿はなかった。








   

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