運命の女神 | ナノ
運命が変わる音がした1/1
あぁ、また一人の少年の運命が変わった。
可哀想に、
また、彼の運命が変わりそうな気がする。
「陽毬っ!!!!!」
病室の向こうで、聞こえる二つの叫び声、
あぁ、溢れ出している欲望、叫び、
運命の輪が崩れた。
「…どうして…っ、こんな急にっ…?」
一人の少女が死んでしまった、
心臓も、息も、運命の輪も、
止まってしまった。
「しょうがないの、その子の運命は……決まっている」
一歩、また一歩と、その部屋に向かって歩み出す足。
「これが陽毬の運命だったんだ、苦しまずに、しかも思い出の場所で逝けたんだ、むしろ幸せな最後だ。
とりあえず池辺の叔父さんに電話しないとな、
俺たちじゃ手続きとか色々できねぇーし…」
「…っ!!」
部屋の扉を開いたらあの少年の姿が見えた。
「…え、君はっ…」
「どうした…晶馬、」
緑色の瞳が、こちらに向いた、
少女の横まで来て、ゆっくりと息をすった。
「この少女の運命は、決まっていたの」
「…う、んめい…?」
「……貴方の運命も決まってる」
「僕の運命なんかどうでもいいんだ…!陽毬の運命は、最初から決まっていたってことかよ?!」
「……そう、ずっと、ずっと前からね」
少年の瞳から、涙が溢れた。
悲しみの量は、分からない。
でも…、
何かを、感じる。
「なんで…陽毬の運命は決まってるんだ!!運命なんて嫌いだ!!!!!」
響きわたった声から、
新しいものを発見したときの音が聞こえた気がした。
同時に、自分の運命の輪が逆に回り始めたような、
気がした。
「おい、なに…言ってんだよ晶馬」
もう一人の緑色の瞳の少年、
私とは、まだつながらない世界。
運命。
「…運命が、嫌い、か…」
面白いわ
「ねぇ、貴方の名前は?」
「何言ってんだよ、今そんなこと関係ないだろ…ッ」
「貴方の名前、は?」
「…高倉、晶馬」
「貴方の運命を変えてあげる」
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