運命の女神 | ナノ

そして僕は一つになった
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響きわたる無機質な音が消えてしまう前に、

少しだけ、持ってくれ…。


「くそぉッ!!!!!」

「あ、にき…」

ガラスドアを開けて走り出そうとした時、

晶馬の手が俺の腕を引っ張った。

「ど、どこにいくんだよッ!!!」

「あいつ、魔女、運命の女神のもとに!」

「まさか…殺す気なのか…?」

晶馬の顔がみるみる青くなるのが分かった、

人殺しとか、そんなの関係ない。

俺は、陽毬のために、

晶馬の手をふりほどくと、

病院をでるために走り出す。

「待てよッ兄貴!やめろ!!!あの子を、殺すなぁッ!!」

病院から出て、再び走り出そうとした時、

あいつはいた。

目の前に、

あの時と変わらない姿で、

「見つけた…ッ…」

「……」

近づくと、沸き上がる想いに感情を任せて、

暗い道の中、地面に少女を押し倒した。

一瞬瞳を閉じて、

再び瞳を開けた少女の瞳は、

真紅の中に金色が輝いていた。

「ッ…」

ポケットの中に入っていた透明の玉を取り出すと

ゆっくりと手の中で握った。

「私を、殺すの?」

懐かしい、声だった。

感情が交差する、

涙が溢れそうだ、

少女の声が、全てが、何もかも変わっていないから

「…陽毬のためだッ、」

玉を握った手は、震えている。

動かせない、

違う、違う、違う、

俺は陽毬が…ッ、

陽毬を助けたいんだッ…。



「…許せ…ッ、」

震える手をうごかして、彼女の胸に玉を押し付けた。

硬い、

苦しい、

「ッ…がッ……」

一瞬瞳を見開いて、

少女は小さな悲鳴を上げている。

「…は、ッふ……ぅ」

殺すんだ、

こいつを、運命を狂わせた、

この女を。

だんだんと埋め込まれていく透明の玉

力を振り絞って、一気に押した。


「ッ、ぐッああああぁ!!!!!」

大きな悲鳴をあげた彼女は、

パタン、と

息が途切れたように…静かになった。

まだ小さく聞こえる彼女の呼吸

「はぁッ、はぁッ……く、」

息を吐き出して、彼女の胸を見れば。

透明の玉は消えていた。

そしてゆっくりと瞳を開いた彼女

「な、ん…で」

ゆっくりと、彼女の腕は動いた。

俺の手に触れると、

そのまま彼女は俺の手を包み込んだ。


「…つめ、たい…ッ…」

彼女の手は冷たい、

触れたことのない、手。




「冠葉」




呼ばれたことのない、名前。


彼女は小さく笑うと、


瞳を閉じた、そしてダランと下がる手。






彼女の笑顔も。初めて見た。



「俺、はッ……」


まだ微かに生きる彼女から離れると、

そのまま駆け出して病院に向かった。

途中で横切った晶馬を無視して、





溢れる涙を無視して、


   

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