運命の女神 | ナノ

呪われれば殺すことなどできない
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「なんであんな簡単に日記を渡しちゃうんだよ」

僕が誘拐されたぐらいで、

「簡単…?」

「陽毬の命を救うにはあれが必要だって知ってるだろう
ちょっと誘拐されたぐらいで私ちゃうバカがあるかよよ…」

「バカ…?」

「バ、カ!」

「あの子の言うとおりにしただけよ!!!」

「あの子…?」

声を荒らげた荻野目さんに目を見開くと、

悔しそうにつぶやいた。

「…あの子の言うとおりにしたら答えが見えてきの…貴方を助けよう、って!!!!」

結局荻野目さんはまだ多蕗のストーカーを続けるらしい、

そんなことしたって…

荻野目さんは荻野目さんなのに…。



なんだか変な気持ちだ。

「晶ちゃん!お鍋、吹きこぼれてるよ!!」

「あっ」

陽毬の言葉に我に帰ると、

慌ててお鍋の火を止めた。

「もーどうしたのぼーっとして…」

「ごめん…」

「晶ちゃん、苹果ちゃんと何かあったでしょ」

「えっ…」

「妹の貴重な女友達なんだから早く仲直りしてね!」

陽毬の言うとおり、

仲直りしたほうがいいかもしれない。

カレー味のロールキャベツを作って、

持っていこう。

荻野目さんのマンションの下で待っていると、

陽毬がいきなり立ち上がった。

「あ!苹果ちゃん!おかえり〜〜」

「陽毬ちゃん…?」

「あの…こんばんわ」

「…なに?」

「お腹すいてないかと思って」

ロールキャベツが入ったふろしきをさし伸ばした

「荻野目さん、カレー好きだったよね」

「全部…貴方のせいじゃなあぁい!!!!!」

「ぶっ!!!」

いきなり頬を殴られると、

言いたい放題言われて、

泣き出された

「どうして…貴方は私のなんなのよーっ!!!」

「僕は君の…なんなんだろう…?」

「生存戦略ーッ!!!!」

いきなり世界が変わると、

あの不思議な空間に来ていた。

そして空間はまた変わると

誰もいない電車の中にいた。

「泣け、メスざる、特別に許可してやる…」

「私の姉、荻野目桃果は16年前にあの事件で死んだわ、それと同時に産まれた私は桃果の生まれ変わりなの、多蕗さんと幸せにならないといけないの!なのに貴方が私の前に現れたから!!」

あの、事件の被害者…ッ、

「なによ…いつもみたいに何かいいなさいよ」

「いや…君も言うとおり、16年前のあの日、君の運命を狂わせたのは僕なんだから」

「バカ言わないでよ、16年前っていったら貴方だって…」

「生まれたんだ、あの日…僕と冠葉は」

「え、」

「だから…あの事件は僕たちのせいなんだ!!!」

「どうして貴方のせいになるの?!」

「だから…あの事件を起こしたのは僕達の父さんと母さんなんだ!」

そう、

僕たちが産まれたあの日。

地下鉄…大勢の人が死んだ。

「聞け!呪われた運命の子らよ。ピングドラムを失った、世界は再び黒うさぎを呼び込んだ、そう運命の日はすぐそこまで近づいている!」

「「?」」

日毬はいきなり倒れた、

すぐに抱き起こせば、うつろな瞳が帰ってきた。

「ピングドラムを手に入れろ、妹の命を救いだければ、己を縛る運命から逃れたくば…そのレールを切り替えたくば、ピングドラムを見つけて…」

「ピングドラムって…あの日記のことだろ?!今更どうしろって…」

「やつを…止めろ……」

「陽毬!」

「そして、あいつを…運命の女神、魔女…を…」

陽毬のかぶっていたあのペンギン帽が落ちると

空間は元に戻っていた。

でも、

陽毬の意識はなかった。


「救急車を!!!!!」


病院に陽毬は着くと、すぐに治療室に運ばれた。

透明なガラスドア越しに陽毬を見つめるが、

苦しそうな表情は変わらなかった。

帽子を付けてもダメだった…。

嘘だろ…、

陽毬…。


機会の音が無残に鳴り響いた。

医者たちが次々と部屋を出ていく…、


「晶馬!おい!しっかりしろ!」

足音が聞こえると兄貴が走ってきた。

もううつろで、視界がぼやける。

「くそッ…」

兄貴に帽子を取られると、

そのまま兄貴はガラスドアを開けて治療室に入った。


   

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