運命の女神 | ナノ
17022/3
「陽毬、どこにいったんだよ…!」
「晶馬」
病院から抜け出した陽毬を探していた晶馬の名前を呼んだのは、
紛れも無くあの子だった。
真紅の中の金色を輝かせると、小さく笑う。
「……答えは、決まった?」
「…答え」
晶馬は小さく呟くと、瞳を閉じた。
再度開くと、晶馬の瞳は夕焼けをうつしていた。
「決まっているよ」
「そう、」
少女にゆっくりと近づくと、頬に触れた。
薄い笑顔を浮かべる処女の唇に触れると、そのまま額をコツン、とあてた。
「僕は、君を選ぶんだ。呪いなんて関係ない」
―決まっていた、僕の答えは。もうずっと前から分かっていたように。
「そう、言うと思っていたの」
晶馬に笑顔を向けながらも、瞳を細めた少女に晶馬は顔を歪めた。
少女の両手は晶馬の頬を包むと、もう一度体温を確かめ合うように触れ合う。
「……私は、もう、呪いなんてうんざりだわ」
響いた声に晶馬は目を見開くと同時に、確かめ合っていた体温が消えた。
目の前から姿を消した少女。
「…ど、こに」
辺を見回しても少女の姿がない。
「まさか…っ…」
――僕はなんとなく分かっていた、
―――彼女はきっと優しい人だと、とても綺麗な笑顔を持っているから
――優しい彼女は僕のために、何をしてくれる…?
晶馬はおびえるように顔を歪めると、小さく息をこぼす。
「嫌だ…、どこにいるんだよ…お願いだから、消えないでっ…」
――彼女は僕のために、死んでしまうのではないかと、そう思って
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