運命の女神 | ナノ
16022/2
「君も選ばれたんだ、だからこの列車に乗るんだ」
「何をするの…?」
「世界を変えるのさ」
列車の先の黒ずくめの集団の中にいる冠葉を見つめる真砂子。
その後ろから小さな声で囁いた。
この世界を帰るんだ。
この世界を正しくする。
罰を受ける君が幸せになれる場所に、
僕と君が笑える場所にするために。
君と出会ったのはもうずっと前だったね。
君は、幸せそうに笑っていたんだ。
あの子の隣で。
あの子も特別だった、でも僕は幸せそうに笑う君に恋におちた。
だってその笑顔は暗かった僕の心に光をくれた笑顔だったから。
僕はあの子が欲しくなった。
でも君は僕を遠ざけた、
何度も、何度も僕は君を求めたのに、
“特別な子”が僕を邪魔する。
そして特別な子の横で笑う君。
僕は特別な子に腹がたったんだ。
「だって、僕には見せない笑顔を君にはするから」
そして僕は君が笑えない状況を作ったんだ、
そして再び君が笑えるようにするために、
僕は君に呪いをかけた。
「あぁ…もうすぐ、もうすぐ君は笑えるんだね」
君は特別で、
美しくて、
運命を操る力を持っていたけれど。
この呪いを喜んでくれるように
君が君でなくなるように。僕しか求められなくなるように。
君が僕を愛するように。
君が、苦しむように。
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