運命の女神 | ナノ
やっぱりあの子は魔女だ2/2
「きっと何者にもなれないお前たちに告げる、さっさとピングドラムを奪っちまうんだよ」
「もう無理だよ!」
いや、まだ可能性はある。
多蕗は婚約しちまったが、
あいつも男だ…
あの女に子供さえできれば。
「それがお前たちの役目だ、あの女とファイト一発!」
「陽毬にそんな下品なこと言わせるなー…!」
いつものように晶馬が先に落とされると、
陽毬の目線はこちらに向いた。
「……運命の女神は、どうしても殺さないといけないのか?」
「ふん、お前もまたあいつに呪いをかけられたものか。」
「…呪い?」
あの、綺麗な瞳の少女。
「そうだ、あいつを見た奴は皆呪いにかかる。」
俺が初めてあの子と出会ったのは、
もうずっと前だ。
「…俺も、呪いにかけられたのか?」
「…そうだな」
「解く、方法は…あるのか」
「だから言っているだろう、
あいつを殺せ、と…
そうすれば運命は変わるはずだ。」
あの場所で、
彼女を見た。
俺よりずっと年上で、綺麗な子だった。
髪も声も、全部。
幼い俺には輝いて見えた、
もう遅かったのかもしれない、
会ってしまったのが、いけなかった。
そしたら俺はこんな想いをすることはなかったのかもれない。
ある時彼女は言った。
“可哀想な子”
そして、俺の前から姿を消した。
それから俺の人生は何もかも、
変わってしまった。
「今頃になって…出てくるんじゃねーよ…」
なのに、
あの日、誰もいないはずだった電車の中に
彼女はいた。
変わらない姿で、座っていた。
俺を見つめる瞳はあの頃と変わっていない。
封印していた想いが溢れ出した。
もう、戻れない。
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