運命の女神 | ナノ

ずっと前の初恋
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「確かに」

電車の中、一人黒ずくめの男から渡された封筒の中身を見て、

言葉を漏らした。

大金だった。

家族であそこにいるには、どうしても必要な金だ

でも、

陽毬が欠けてしまうかもしれない。

ピングドラムを、

運命の女神を、

ふと顔を上げると、目の前に少女が座っていた。

気付かなかった、

誰もいなかった車両の中に、少女がいたなんて

銀色の綺麗な髪が印象的だった。

白い肌に黒い長いまつげが伸びた瞳は閉じられていた。

陽毬より少し上くらいか、

見たこともない少女になんだか不思議な思いを抱いていた、

あの瞳の色は何色だろう、





交わらなかった世界が、

また交わろうとしてる。




「え、」

少女の唇が動いた、

聴きやすい声だった。

でも、耳に入った瞬間不思議なトーンに変わる。


「交わらなかった、世界…?」

「…貴方と、私の世界のこと」

「!」

瞳が開かれた。














俺は昔、ある少女に恋をしていた。

幼かった俺は、毎日毎日少女を想い続けていた。


「俺は、君が」


彼女髪は綺麗だった、

彼女の声が好きだった、

彼女の全てを愛していた。


でも彼女はある日突然消えてしまった。

俺の前から消えてしまった。

残ったこの感情だけが、

泣いていたような気がする。


伝えられなかった想いはやがて、

違う想いに変化したのだ。




思い出した。

ずっと秘めていた想い、

ずっと閉ざされた感情。


音を立てて、

流れ出すように。





そうだ、

あの子の瞳は真紅で、

金色の光が中で輝いていた。





   

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