私 | ナノ

殻のヒビ
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「…チョコボに会いたいなぁ」

「…え、チョコボ?」

イスに座って本を読んでいたエミナが顔を上げた。

それに頷くと、ゴロンとベットに横になった。

「…チョコボに会ったこと、あるの?」

「……一回、だけ」

「それは、あの時?」

「うん」

エミナの本がパタンと閉じられると、

視線はまっすぐNO NAMEに向けられた。

チョコボ、

そう、なんだか急に会いたくなった、

あの時撫でたあの気持ち良い感覚が忘れられない

なんだか、心が休まった。

「……NO NAME、分かってると思うけど」

「うん、分かってる…わかってるよ」

分かってる。

私はここからでられない、

きっとあのチョコボも殺されてしまっただろうか

生きていたらよかったのに。

私にあっただけで殺されてしまうなんて、

なんて不幸なチョコボなんだろう、


そうだ、私に会わなければよかったのに…

触れなければよかったのに。


でも確かに私はあのチョコボのおかげで、

緊張していた心が休まった。

ごめんね、優しいチョコボ、



「そうだ、NO NAME。ほら洋服買ってきたの!」

エミナがしんとした空気の中、

放った言葉だった。

紙袋からもさもさと手を引っ張り出すと、

そこには可愛らしい服が広がった。

「この服、絶対似合うと思ったのよ」

「本当だ、好きな色…ありがとう」

それはパステルカラーの可愛らしい服だった。

こすぎないで、

ふんわりした色…。

エミナは私のためにいつも何か持ってきてくれる

ここからでられない、私のために。


「…エミナ、」

「なに?」

「……ごめんね」


するとエミナの瞳は細まった、

悲しい表情をしていた。


ごめんね、エミナ、チョコボ。

私のこと、思ってくれて。

でも…

分からない、

全然分からない。

私はなぜここにいるのか、

答えが見つからない。












「じゃあそろそろ行くわね、夜にはクラサメがくるから」

そう言って、扉を閉めると、

深い音を立てて、扉のキーがロックされた。

本を数冊持って廊下を歩くと、

見慣れた姿がこちらに歩いてきた。

夜、ここに訪れるはずの彼だった、


「…夜からじゃないの?」

「仕事が早く済んだ」

「……そう、」


クラサメの瞳は細まると同士に、

エミナの顔は歪んだ。





「もう、限界よ…」

同時にクラサメの目線は、

NO NAMEの部屋に向いた、

そして、小さく吐かれた言葉。




「あの子、もうすぐ壊れてしまうわ」


     

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