私 | ナノ

2201
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「どうしてだろうね」

「・・・・・・僕は、決めたことがあるんだ」

星空の下、牧場で隣に座っていたエースの言葉が、耳元で囁かれる

「どうしたの・・・?」

強い眼差し、決意がこもったその表情

なんだかその言葉を聞きたくないような気がして、勝手に涙がこみ上げてくる

「僕は進まなければならないんじゃない、」

向かい合ったエースの身体、拳を強く固めて、胸の前で開く

静かなこの牧場の中で、二人だけしか聞こえない動物達の声

二人だけしか見えない星の美しさ

エースは瞳を閉じて、再び開く

瞳が輝いたような気がして、胸の奥から何かがこみ上げてきた

「僕は、自分で進む・・・君を、守るために」

「やめてよっ・・・」

自然とこぼれていた言葉、頭の中でエースの顔がぐちゃぐちゃになっていく

どうしてそんなこというの

どうして自分を大切にしないの

どうして、私のために・・・・・・自分を犠牲にするの

「そうゆうの・・・もう、うんざりなの・・・」

こぼれ落ちた涙は、地面に落ちて、草を濡らす

エースの腕が伸びてきて、頬を撫でる、

その行為で、また涙が止まらなくなった

「お願いだから・・・っ・・・そんなこと言わないで」

生きて欲しい、死んで欲しくない

私が化身だから、犠牲になった人はたくさんいる

忘れられてしまった人はたくさんいる

クリスタルを守ろうとして、化身を守ろうとして、この国のために

「僕は、NO NAMEを守りたいんだ、化身じゃない、君自身だ」

瞳が見開いた、エースの顔がぼやける、涙でぼやけてしまう

「いやっ・・・死んで欲しくない、お願いだから、行かないで」

クラサメのように、置いていかないで欲しい

彼の残してくれなかった約束のように、消えてしまわないで

「もう決めたことなんだ、誰にも揺らがせない。これは僕の意思だ」

エースの瞳がまっすぐで、だからすごく怖い

彼の記憶がなくなってしまうのが、死んでしまうのが、

どうしてだろう、なんで私は化身なの?私は化身でなければ今頃身を投げてしまえたのに

「・・・NO NAMEも自分の意思で動けるはずだ」

「動けないよ、私は一生とどまり続ける」

決まったことは変えられない、固定された答えはもう二度と変わることはない

死ぬことが定めれた者は死ぬ、生きることを選ばせられた者は永遠に生きる

それは、運命なのだから

運命という鎖に縛られたのは、私たちなのだから

「違う・・・選べる、だって君はNO NAMEだろ?ちゃんと君の心を持っている」

エースの顔が微笑んで、クラサメみたいな笑顔を浮かばせる




――選べる











   

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