私 | ナノ

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「化身様、お久しぶりです」

「セツナ…久しぶり」

部屋に訪れたセツナ、朱雀のルシにNO NAMEは微笑むと、セツナは下げていた頭を上げた。

変わらないセツナ、最初にあった時から、何一つ変わっていない。

「お気づきですか、この国の行く末を」

「化身、だからね」

ずっと前から感じていた感覚、

「さすが化身様だ、どうしましょうか…私にクリスタルの意思をお伝えください」

クリスタルの意思、私と繋がるクリスタルの意思とは私の意思でもある

伝えなくてはならない、だが、それに反発するものがある

どうして私は化身なのだろうか

どうして化身がいるのだろうか、

クリスタルに問うこともなかった、問う意味などないと思っていた

「セツナ、私は…化身失格だと思うんだよね」

「…」

「いっそ私が死んでしまえればいいのに」

忘れられていく人々の苦しみを、なくなってく記憶を感じられない人々の悲しみを

全部背負って無くなってしまえたら、どんなにいいか

「それは、この国の滅亡を意味しましょう」

「……そうだろうね、私の死は、クリスタルの死…だったら私が弱っていく意味がわかるよね」

いずれは滅びる私と、クリスタル、それは確信があった

薄暗い部屋の中でセツナは小さく口を開くと、静かに笑う

「それではそのときまで貴方をお守りします、最後まで」

「……そう、ルシとはどこまでも悲しい運命をたどる」

「先代と同じことを仰る、これを預かっていたんです…どうぞ」

セツナが差し出したのは一つの石、赤く光を込めた小さな石

「覗いてみてくださいな」

そう言ってセツナは部屋を出ていくと、扉が静かに閉まる。

小さな石を眺めてはNO NAMEは、息を吐き出して石を服の中にしまう。

「クリスタル…」

見えている、この国の行く末が、運命が、未来が


なのに、どうすることもできないなんてね







   

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