私 | ナノ

2001
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「NO NAME、本当に元気がないね…私にも話せないようなことなの?」

太陽が落ちようとしている、夕日が差し込む部屋の中、

窓辺に座っていたNO NAMEにエミナは語りかけた。

どれぐらい時間がたっただろうか、NO NAMEは瞳を細めて、ただ空を眺めていた。

「……クラサメの気持ちが、わからない」

エミナはそれに小さく笑うと、ベットに腰掛けて窓辺にいるNO NAMEを見つめた。

「…すごく、苦しそうなの、私なんでかわからなくて」

助けてあげたいけれど、その原因はなんだか自分にあるような気がして

妙に苦しい気持ちを抑えていた。

あの時のクラサメの顔が忘れられない、ユラユラ揺れる瞳が私を見ようとしなくて

ただ苦しそうに、顔を歪ませる。

「貴方たちって、本当に曖昧な関係よね」

「…曖昧?」

「ええ」

笑みを浮かべるエミナをNO NAMEはぼーっとしたような顔で眺めていた。

なんとなく分かっている、

私たちは触れ合ってきた、私が寂しい時、悲しい時、

彼は一緒にいてくれる、温めてくれる。

それがどんなことを意味するのか、自分の抱く感情なんか気にしていなかった。

「NO NAME、そろそろ交代の時間だわ」

「やだ、エミナ以外入れたくない」

見張りの交代の時間、マザーは滅多に来ないが、エミナと交代といったらクラサメがくるだろう。

「嘘、会いたくてしょうがないって顔してるよ」

その言葉に瞳を丸くさせると、NO NAMEは小さく息を吸い込んだ。

「じゃあ私は行くわね」

静かにエミナは部屋を出ていった。

時期にクラサメが来る。


再びすっかり暗くなった空へと視線を移せば、空には星が浮かんでいた。

こんなにも星は綺麗なのに、争いは日々続く。


――あの日も、こんな星空だった。


私が一度脱走した日、もう覚えてはいないけれど、

私は気づいたらこの部屋にいて、もう何も思い出せなくて。

空っぽの心が胸にあった。

だけどこの部屋から見える星空がすごく綺麗だったのを覚えている。

そして初めて、クラサメと会った日も、こんな感じだった。

仏頂面で全然笑わない人だったけれど、彼と刻む時が、こんなにも安心できる。

いつしか自然と触れ合っていたけれど、

彼に向ける感情に、


名前をつけなくてはいけない。





   

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