私 | ナノ

腹がたつ
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「私は…わからなくなってしまった、どちらが正しいのか」

目の前で私を見つめる少年の瞳は変わらず綺麗だったはずなのに、

ユラユラと揺れ始めた。月の光で反射するプラチナブロンドの髪は鮮やかに輝いている

だが少年の瞳は段々を深みを増していく。

ゆっくりとした時間が流れたような気がする、少年の瞳をずっと見ていた気がする。

それに少年は困ったような表情をして少年は私を見下ろした。

「僕は、進むことしかできないんだよ」

それは悲しいのか、嬉しいのか分からない表情のはずなのに。

なんだか切なく見えた、それが自分と重なって、胸の奥がきゅっと傷んだ。

「私も、留まることしかできない。前には進めないんだよ」

答えの見えない問題をずっと抱えてる。

もう分かりきった真相をずっと受け入れられないまま、私は成長した。

時間が経てば変わるだろうと思っていた心も、変化はなかった。

変わらない私と対照的に世界は変わってくる。

変わらない現実のはずなのに、世界は歪み始めている。

ふっと小さく笑った私に、少年も小さく笑った。

穏やかなその笑顔を見つめていると、少年の口は開いた。

「僕たちは、似ているのかもしれない」



クリスタルに忠清を誓う者、


縛られた運命。




「……そうだね、ねぇ貴方の名前は」

今まで知らなかった名前、意味のないものだと思っていた。

すぐに忘れてしまう名前なら、要らない。

そう思う自分があったのに、新しいものを見つけた気がした。

何かを感じる胸を抑えて、見上げた顔は穏やかだった。

瞳を細めた彼は小さく呟いた。

「エース」

繰り返すように呼んだ彼の名前、エース。

それは意味がないものなんかじゃなくて、

ちゃんとした彼の名前、意味なんか必要ない。

「私は、NO NAME」

それに微笑もうとしたエースの表情は一瞬で鋭いものへと変わった。

その鋭い視線の先は私の瞳ではなく、私の後ろ。

じっと見つめるその先を振り返れば、チョコボの群れしか見えない。

サンの視線もまたエースと同じ方向にあった。

「どうかしたの?」

「……いや、人がいたような気がして」

「チョコボの飼育係りさん?」

「……違うような気がする。」

エースは先ほどとはまったく違う雰囲気をまとわせて、

そこを見つめていた。ふいに立ち上がると私に向かって手を伸ばした。

「今日は帰ったほうがいい、魔法陣までだけど送るよ」

「うん、ありがとう」

私が化身ということを理解しているせいか、辺りに気を配るエースをじっと見つめていた



   

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