私 | ナノ

早く帰ろう
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重たい瞳を開くと、
朝の眩しさがカーテンから漏れていた。

「まぶ、し…」

布団を被れば、広いベットの中に誰かの暖かさがあるのを感じた。

あれ、

クラサメ、さっきまでここにいた…?

昨日の夜のことは覚えているが、

いつもクラサメは私の起きる前に出ていってしまう。

少しだけ温かみが残ったベットで再び眠りに着こうとした時、

部屋の扉が開いた。

「おはよう、NO NAME」

「…………マザー…」

扉を開いて入ってきたのは

マザーだった。

ベットの近くのイスに座ると、私を眺めた。

「定期検診よ、」

「……早い、朝…早すぎ」

もう一度瞳を閉じると、

マザーの小さな笑い声が聞こえた。

「見えてるわよ」

すっと長い指が伸びてくると、

私の首元に当てられた。

そこには小さな赤い花が咲いていた。

「…はぁ、分かった」

ため息をついて立ち上がると、

着替えを始める。

定期検診、

クリスタルの、定期検診。

「はい、リング見して」

小指についているリングを見せるように差し出した。

マザーが赤く輝くリングに触れると、

炎が燃えるように光が輝いた。

「大丈夫そうね」

「…脱走なんてしないよ」

「……それだけじゃないわ、貴方のために」

「…そう、」

赤いリングは、

本当に赤い。

あのクリスタルと同じだ。

「行くわよ、」















ゆっくりとクリスタルに手を伸ばすと、

クリスタルは赤く輝いた。

感じる、

クリスタルの光


いつもと変わらない光なのに、


なんだか…


「朱雀に、クリスタルの加護………、」

「どうしたの?」

「…なんでもない、クリスタルは大丈夫…」

「そう、」

「もう帰ってもいいよね」

「…ええ」

出口に向かって、扉を開いた。

すると目の前には誰かが立っていた。

顔を上げると、そこにはクラサメの姿があった。

「迎えに来た、」

「そう、私は用があるから、頼んでおいたのよ」

マザーはそう言うと、キセルを吸った。

その言葉に頷くと、

クラサメの横を通って部屋を抜けた。


「NO NAME」


動く足を止めると、後ろを振り返る。


「体は大丈夫か」

「大丈夫じゃないよ、クラサメのせいで」

少し笑いながらそう言うと、

クラサメの瞳が細まった。

「帰ろう、」





私とつながっているはずのクリスタルなのに、


なんだか受け入れられない。






早く帰ろう、



何もないあの場所に。


     

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