私 | ナノ

それぞれの道
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「……、」

何かの視線を感じて、振り返った所、そこには何もなかった。

何もない、そう認識しているはずなのに、なんだか必死に何かを探そうとしている自分。

“何を探しているの”

そんな疑問が体中を巡る。

「クェー!」

段々と瞼が下に下がっていたのを上がらせたのはチョコボの声だった。

目の前にいる可愛らしいチョコボに微笑むと、優しく頭を撫でた。

ふわふわする毛並みは相変わらずで、暖かいその体を抱きしめた。

また眠ってしまいそうだけど、クラサメに怒られるからやめておこう。

「そうだ、貴方に名前をつけよう」

愛らしい大きな瞳をじっと見つめて考えるが良い名前が思い浮かばない。

頭をかしげながら腰を下ろすと、チョコボも腰を下ろして私を見つめた。

「そんなに期待はしないでね」

微笑みながら口走にそっと触れると、チョコボの瞳が細まった。

また毛並みを整えるようにゆっくりと撫でると、気持ちよさそに体をくねる。

「ほんとにあったかいね」

チョコボの体温が人間より高いのは知ってるけど、なんだか本当にあったかい。

「あ…そうだ、サンとかは?」

サン、そう呼んでみるとチョコボは自分から私に頭を擦り付けてきた。

「これで…いいよね」

太陽みたいに暖かい、ならサンでいいよ。

あったかい名前なんてすごくいいと思う。

「サン……」

なんだか貴方の名前を呼ぶと不思議な気持ちになれるね、

胸の中のずっと奥から、何かが私を呼ぶみたいに、

手が暖かくなる。

誰かが私の手を握ってるみたいに。

「…おかしいな」

なんだか切ない、なんだか苦しい。

あたたかい感覚なはずなのに、

何かがおかしいよ…、



「……それは、チョコボの名前?」

聞いたことのある声に思わず振りかえった。



   

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