私 | ナノ

行ってはだめ
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「イザナ、」

「よぉ、NO NAME」

珍しく昼間から牧場に行くと、

チョコボの世話をしているイザナの姿が見えた。

「チチリ、」

後ろからツンツンとチチリにつつかれ、

撫でれば気持ちよさそうに体をひねった。

「チチリはすっかりNO NAMEになついたみたいだな」

「…そうだと嬉しいな」

「本当にチョコボが好きなんだな」

「うん、可愛いし、私にとって大切な子達なの…イザナ?」

イザナの瞳がいつもより真剣だった、

どうしたんだろう、と顔を覗けば、

少し顔を赤くして困ったように私を見た。

「…あー、参ったな……」

片手で顔を覆うイザナはなんだか変だ。

「その…、」

イザナが口を開こうとした時、

響いた警報音。

「「!!」」

異様な空気に空を見上げると、

上空に皇国軍の戦闘機が飛んでいた。

「…あれは、皇国…!」

「朱雀に…攻めてきたの…ッ…?」

「くッ…チチリ!」

イザナはチチリを連れて走り出そうとたのを私は慌てて止めた。

「どこにいくの?!危ないよ…ッ…」

「…NO NAMEはここにいてくれ…」

チチリに乗り込んだイザナの表情は険しさをふくんでいた。

「やだよ!だって…死んじゃうかもしれないんだよ…」

私は、忘れたくない。

イザナのこと、貴方の優しい笑顔を。

忘れたくない…、

イザナの腕を掴んだ私の手を、イザナは片方の手で覆うと、ゆっくりと外した。

「……イザナ、」

「俺にとってのチャンス、なんだ……
なぁ、NO NAME。戻ってきたら、俺の話を聞いて欲しい。」

「……、」

黙っていると、

イザナの手に引き寄せられた。

チョコボに乗っているせいか、かなり高いイザナに抱きしめられた。

「イザナ、」

イザナの背中を強く抱きしめると、髪を優しく撫でてくれた。

「生きて帰ってくる!」

ふいに離されて、

イザナはチチリと共に走り出してしまった。

「ッ…イザナッ!!」

途中まで追いかけたが、魔方陣へ入ってしまったイザナ、もう姿はなくなっていた。

「……信じてるよ、私は貴方を忘れない。」

魔方陣を見つめていると、

ふいに魔方陣の光が消えていく。

「どうゆうこと…、」

そして頭に電流あ流れるように走った痛み、

「ぐうッ……」

頭を抱えて、地面に膝をつくと、

心臓が揺らいだ。

「ぐ…ぁ……」

クリスタル、

クリスタルに、異変を感じる。

何かがクリスタルを抑えている。

クリスタルの魔力も抑えている。


「……朱雀が、負ける……」

これはほぼ魔法が使えない状況。

ッ…イザナ…、


クリスタル…

どうしたら、いいの…、

沢山の人が死んでしまう、

人は、沢山の人を忘れる…、



「……ぐぁ…、」

痛い、全部。

「見つけた、朱雀クリスタルの化身さん」

「…ッ、誰」

目の前に現れたのは、

皇国の鎧をまとった、声の高い人。

感じる、この感覚は白虎クリスタルの……、

「貴方、ルシ…、白虎クリスタルのルシ…?」

「そう、お前を殺せば全て終了」

殺す、

私を…、

後ろに一歩下がると、

目の前のルシは消えた。


「すぐ済ませるよ」

「!」

背後からあのルシの声が聞こえたと思ったら、

後ろから強い衝撃を感じた。

「ッぁ…」

そのまま吹き飛ばされると、

地面に転がり落ちた。

「…くッ、」

「クェーッ!!」

「ダメだよ!」

今にもルシに襲い掛かりそうなチョコボ達を止めると、

ルシに鋭い視線を送った。

「なんだよ」

「……戦争なんて、儚いだけなのに」

「はッ、」

息を履き捨てるように笑ったルシ、

「終わりにしよう、化身さん」

「…、」

ルシが私に近づいたとき、

上から飛び降りてきた人物、

プラチナブロンドがなびいた、

「貴方…は、」

彼だった。

カードを構えた彼は私の前に立つと、

目の前のルシを睨みつけた。


     

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