私 | ナノ

おちつく
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「ファイアッ…」

かすれた声でそう叫べば、

振り上げた両腕がだんだんと熱くなってくるのを感じる。

「くッ…」

力を踏ん張った瞬間、

激しい炎が渦を巻いて出現した。

これはファイアじゃない、ファイガだ。

「ッ…む、り…」

「落ち着けNO NAME!」

「抑えられないッ…」

まただ、制御ができない。

炎を出したまま、やめることができない。

クラサメの言葉は聞こえているが、

自分の力でやることができない。


「ぐ…弾かれるッ」

わかる、強すぎて、何かが自分から爆発しそうになる。

これで何回も怪我してきた。

「NO NAME、」

ファイガを放出する手の腕をクラサメが掴んだ。

「クラサメ…ッ、」

「落ち着け…」

「落ち着いてられないッ…自分じゃどうしても…制御できない…」

頭が痛い、

苦しい、

視界がだんだんぼやけていく。

放出されたファイガが爆発寸前の所で私は意識を手放した。

「ッ…」

「NO NAME!」

倒れかけたNO NAMEをクラサメは支えると、

もう放出されたファイガが爆発しそうなのを確認すると、

NO NAMEを抱き上げて駆け足で訓練場から出た。

「…大丈夫?!」

「あぁ、」

エミナが近づいてくると、
クラサメの抱えるNO NAMEを見つめた。

「熱、あるみたい…」

「……見して」

「ドクター・アレシア、」

アレシアがゆっくりとこちらに近づいて、

NO NAMEの頬に手を滑らした。


「…やっぱり体的に限界みたいね、体力もあまりないし、魔法も慣れていない、それなのにいきなり大きな魔法を出せてしまう。
NO NAMEはやはり戦闘向きではないわ、」

少し苛立ったように最後の言葉を呟いたアレシア、

それは間違いなく魔法局の上部のものに言ったと思われた。

「NO NAMEを部屋に運んで安静にさせなさい」

それにエミナと共に頭を下げて頷いた。

NO NAMEの部屋に向かう廊下をエミナと一緒に歩いていると、
エミナの低い声が響いた。

「…上はなんて言うのかしらね」

「分からない、」

エミナの言いたいことは大体分かった、

今までエミナはNO NAMEのことを実の妹のように可愛がっていたし、

心配する気持ちは表情からも感じ取れた。

「私、傷だらけになっていくNO NAMEを見ていられない…」

「…そうだな」

中々消えない傷を見ていると

なんだか切ない。

NO NAMEに魔法を教える意味はあるのだろうか

クリスタルと同等の存在。

クリスタルの化身、

存在することが意味がある。

NO NAMEを戦わせることになるということは

朱雀の終わりを意味する。
























重い瞼を開ければ、

視界にクラサメの顔が見えた。

「大丈夫か」

「…だるい。」

「魔力の使いすぎ、だそうだ」

「好きで使ってるんじゃないよ…」

「あぁ、わかってるさ」

少し瞳を細めて柔らかく微笑んだクラサメ

「あ、その顔好きだな」

手を伸ばして、

クラサメの頬を撫でれればその手にクラサメの手が重なった。

「なに?」

「いや、」

クラサメはそう言って瞳を閉じると、

私は上半身を起き上がらせた。

ぼーっとする、

「寝てろ」

「……クラサメ」

「なんだ…?」

「ねぇ、抱きしめて」

なんだか、恐い。

クリスタルから感じる、何かが

私に恐いと感じさせる。

「クラサメ、」

もう一度クラサメの名前を呼ぶと

クラサメの手が伸びてきた。

ぎゅ、と優しく引き寄せられると、

クラサメの胸板に顔を押し付けた。

「落ち着く、」

なんだか落ち着くその香り、

そう呟くとクラサメの腕は強くなった。


     

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