私 | ナノ

あったかいね
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「ん、」

瞳を開くと、いつもの天井があった。

あの綺麗な星空が見える牧場ではない。

そういえば、クラサメが…

運んできてくれたんだっけ。

ふと寝返りを打つと、見えた朱いもの。

ベットの横のテーブルの上には綺麗に折りたたまれた朱いマントがあった。

「…どこかで見たような、」

そうだ、あの青年のものだ。

プラチナブロンドが似合う綺麗な瞳をもった彼。

「起きたか、」

「クラサメ」

部屋の扉が開くと、クラサメの顔が見えた。

マントを見ていた私を見て口を開いた。

「それはNO NAMEに掛かっていたが、NO NAMEのじゃないのか」

「え、う、ん…私の、かな」

「…、」

人とあってしまったとバレてしまえば、

もうあそこに行けないかもしれない。

クラサメの表情が歪むと、ため息をつかれた。

「誰と会った、牧場の管理人か?」

「分からない、若かったけど」

「……生徒か、」

クラサメはそう言うと、近くのイスに座った。

そして差し伸べられる手、

「手、出してみろ」

「手…?」

布団から手を出して、差し伸べれば、

白い服の袖をすばやくまくりあげられた。

「なに?」

「…エミナが、言っていたからな」

クラサメの視線の先を見ると、

傷だらけの手があった。

「あ、訓練の…」

汚い、手だな、

これが、私にふさわしいのかもしれないけど。

「エミナが随分と心配していた」

「エミナが、」

訓練、

マザーがいうには魔力が大きすぎる。

制御するには相当時間がかかるし、

体力のない私にはキツイらしいけど、

上の命令は変わらなかった。

確かに痛かったけど、何かが刺さったわけとかじゃないし…

全然平気。

何度もケアルをかけてくれたのだが、

傷は消えなかった。

「…なんでそんな顔してるの?」

クラサメの瞳は細まったまま、

変わらず歪んでいた。

「クラサメ」

反応のなかったクラサメの名前をもう一度呼べば

視線はまっすぐこちらに向いた。

「…なんでもない」

その言葉と同時に私の腕を離したので、

また暖かい布団に手を潜りこませた。

「あ、そろそろ訓練の時間だ」

マザーに言われたことを思い出して、

慌ててベットから抜け出して準備を始めると

クラサメもイスから立ち上がった。

「上が、魔法を制御できれば、魔導院に通わせると言っていた。」

「魔導院、」

それはクリスタルから力を授かった人々の学び舎

そして…、

任務次第で死んでしまう人だっている。

戦うものが集う、あの魔導院。

あの青年もまた戦っているのだろうか。

「ねぇ感じるの…クリスタルから」

「クリスタルから?」

「絶対、何か起こる……近いうちに…、」

「…いつから感じ始めた」

「最近…ううん、ずっと前からだけど、なんだか強くなってきた」

知ってる、皇国との関係も。

なんだか、

怖い。


   

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