私 | ナノ

おさまらない
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身体が揺れている、

誰かに、抱きかかえられてる…?

重たい瞳を開くと、視界に写ったのは見覚えのある廊下だった。

抱きかかえられている腕が暖かい。

「…クラサメの匂いがする」

瞳を閉じれば、クラサメであろう人の胸板に顔を押し付けた。

安心する、柔らかい香り。

「……あんな所で寝るな、」

やはりクラサメだった、

いつもより声が低いような気がする。

「ごめんね、あそこ、なんだか安心する。」

チョコボの温かさを、身体に感じられる場所。

少し笑ったら、

クラサメの腕の力が強くなったような気がした。

「……クラサメ、なんだか久しぶりだね」

「あぁ、指揮官を担当する仕事があったんだ、その準備で」

「そ、う…」

また眠気が襲ってきた、

なんだろう、最近すごく疲れた。

外の空気に慣れていないのだろうか、

身体が、重い。

「NO NAME、」

「なんだか、クラサメの腕が一番安心する…」

完全に視界はシャットダウンすると、

何も聞こえなくなった。






















「クラサメ」

「なんだ、」

自室の扉を開けたのはエミナだった、

その表情は曇っている。

大体なんの話か分かったが、

その内容が気になった。

「昨日から、NO NAMEの訓練が始まったんだけど…」

「訓練、」

訓練、知っていた。

気になるのはその内容。

「…NO NAMEの中の魔力を調べたんだけど、
やはり検知不可能だったわ…」

「そうか、」

「それで…とにかく訓練を始めたんだけど、
魔法を使うとNO NAMEの魔力が多すぎて制御ができなくて…、」

「それで、」

「何度も失敗して、怪我をしたらしいの、しかも上はそれを止めないわ!」

怪我、

あの白くて弱い身体に傷がついた、

「……上に逆らうことなどできない、」

「…そう、よね…邪魔したわね」

そう言って、部屋の扉を閉めたエミナ。

その姿を見送らずに、手元にあった資料に目を通した。

だが理解せねばならない内容も何も入ってこない、

「……ダメだ、」

頭が回らない、

ため息をついて、席を立つと、

NO NAMEの部屋に向かう、

だが姿はなかった、なら牧場に。

魔方陣を使って牧場に向かうと、

遠くでチョコボの鳴き声が聞こえた。


「…こんなところで、」

その鳴き声の元に向かうと、

横たわったチョコボと一緒に寝むるNO NAMEの姿があった。

「…朱いマント…、」

NO NAMEの上にはマントがかかっていた。

しゃがんで、脇に手を入れて、

抱き上げると魔方陣に向かった。

冷たいはずのNO NAMEの体はなぜか暖かかった、

すぐ下で眠るNO NAMEを抱えて部屋に向かおうと歩いていた時、

小さな身体が動いた。

「クラサメの匂いがする…」

そう言った彼女の言葉も

“クラサメの腕が一番安心する”

と言った言葉も、




なぜか熱いものを呼び起こした。



抱きしめる力を強くしても、


おさまらない、


     

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