私 | ナノ

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ほとんどの人々が任務に出た、運命のとき

たくさんの記憶が消えてしまう時

ポケットに入っていたセツナから貰った石を取り出して、除く

眩い光を放った石は視界を包むと、それは空間を変える

心地よく、懐かしい、そんな感覚に包まれて、息をするのが逆に苦しくなる

「やあ」

低く響いた声に見覚えがあった、顔も知らないけど心が分かっている

彼は、先代の化身、

赤い髪を靡かせた、彼は微笑みながら、私を見る

「ここはなんだか息苦しい」

「そう?僕は君がいた場所のほうが息苦しいけどね」

ここは、広すぎる

白くて出口がどこだかわからないこの空間、草原のように広がっているこの場所

「私はどうすればいいの・・・貴方は、どうしたの」

唇を釣り上げた彼は、小さく声を発した

「僕はとどまった、この国のために化身で有り続けたよ」

「それしか選択肢は、ないっ・・・」

「あるさ、君にはある。僕ではないからね・・・クリスタルに聞いてごらん、君は一度自分で選んだことがあっただろう」

その瞬間、頭の中に流れ込んできた映像と記憶に瞳を丸くした

思い出した、鮮明な記憶

家族、兄、優しい笑顔、暖かい感覚

「こんなにも、暖かいっ・・・」

「君は、化身としてここへ連れてこられた後、会いにいったんだよ家族に」

でも会えなかった、夢を見て、引き摺り下ろされた

「そして奴らは私の記憶を消した・・・」

「ああ、それでも君が選んだ選択だ、君は自分の足でここを出ていった」

裸足で、地面を蹴って、早く走りたいと思ったあの時

転んだっていい、怪我したっていい、早く、早く、家族のもとへ

「私は・・・すっかり変わってしまった」

抱いて気持ちは、子供の頃からわからなかったのに

成長したのは体だけで、心は子供の頃の自分に負けていた

嫌なら逃げればいい、逃げるのに疲れたら戦えばいい

なんで、そうゆうことをしなかったんだろう

運命だけを受け止めて生きてきたのだろう

「君はクリスタルの化身だ」

「でも私は、私」

歩いていこう、子供の頃の想いを抱いて

それはすごく重いけれど、抱え切れそうにないものだけど

しっかりと背負って、歩いて、私は、私でいるんだ。

「運命の鎖は絶たれたり、そなたの想い、抱いて歩くがいい」

彼の声が響くと同時に、身体の中心から燃えるような熱さを感じた

自分の中で燃え続ける力を、



解放しよう



「全ての戦いを、終わらせるために」



クリスタルは私に運命を告げた

滅びると、全ては地に変えると

私は受け入れるために生まれてきたわけじゃない

変えるために生まれてきたのだ

運命を、

クリスタルの意思を守るために





歩け、走れ、自分の足で、地面を蹴れ




「これは私の選択だ!!!私の意思で!!!この世界に!!!朱雀に!!!皆に!!!彼に!!!」






朱雀にクリスタルの加護あれ













最後に聞こえたのは、彼の優しい声と

鳥の鳴く声





でも、頬に落ちた冷たい雫、


どうしてそんな顔してるの、ねえ教えて









   

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