私 | ナノ

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セツナから聞いた、ルシの支援

私を最後まで守ると言ったセツナの決断

涙が枯れしまったかのように、心の中で何かが沈んでいった

星空が見える空を眺めながら、窓に手を触れる

「NO NAME」

部屋に入ってきたクラサメに笑いかけると、彼も微笑みを返した

でもそれはとても切ない微笑みで、胸がえぐられるように、辛い

「なんて言えばいい?私、この日が来ること…わかってた」

クラサメが近づくと、NO NAMEの手を握った、暖かいその手。

「何も、言わなくていい」

全て分かっていたかのようにクラサメは小さく笑うと、NO NAMEを抱きしめた

小さなその身体を強く、優しく抱きしめて、離す。

その言葉がすごく痛い、心がボロボロになりそうな優しい言葉なんかいらない

本当は、貴方がいてくれればいいのに

「クラサメ、前に同じような感覚を感じたことがあった」

クラサメの腕の中で、鮮明に残る、感覚と優しい声

「あの人…帰ってくるって言ってたような気がした、生きて帰ってくるって」

クラサメは小さく頷くと、再びNO NAMEを強く抱きしめる

もっと強く、もっと、もっと、痛みを感じるほど抱きしめて欲しい

絶対にその感覚を忘れないように

「私は…信じたの、信じてるよ…って言った」

瞳の中に溜まるものを落とさないように瞳を閉じたのに、こぼれ落ちてそれはクラサメの腕の上に落ちた。

どうしようもない心、悲しくて切ないのに、言葉にできない想い

「なのに…私、その人のこと思い出せないっ…」

叫ぶように吐き出された言葉は現実を露にさせる。

しんだんだ、彼は。もう分からない、彼は死んだ。

苦しいはずなのに、全然覚えてない

「私、貴方を忘れるなんて嫌だっ」

「ああ」

クラサメの唇がNO NAMEの口元におちると、クラサメは瞳を細めてNO NAMEを見た

NO NAMEの瞳からこぼれ落ちる涙をすくって、再び唇をおとす。

「その約束でお前を悲しませるぐらいなら、約束なんかしない」

クラサメが静かに囁いた言葉、

帰ってくると、絶対に帰ってくるといいたかった。

でも、心の中では分かっているのだ、NO NAMEの記憶から消えていくだろう自分の姿

自分と交わした約束で、NO NAMEが自分を覚えている間、悲しむのならば





約束なんかしない






「やだ、やだあっ…帰ってくるって言ってよ!!生きて帰ってくるって!!!ねぇ…言ってよ…ぉっ…」




クラサメが瞳を細めて笑った


その瞳からは、小さな雫がこぼれ落ちて、ゆっくりと頬をつたわった

   

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