私 | ナノ

揺れる瞳は君のもの
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「ここが、魔導院なんだ」

移動した先はもう建物の中のようで綺麗な内装に驚きながら

キョロキョロと周りを見回した。

それと数人の生徒の姿が見えた。

青いマントに黄色いマント、様々な色のマントを羽織っていて、

クラサメの後ろを歩いていると、視線がこちらにむいているのがわかる。

それに少しぎこちない気持ちを抱きつつ、気にしないで歩いていると、

青いマントを羽織った男子生徒がクラサメに近づいてきた。

「どうした」

「それが0組の………」

「分かった、だが今は」

その言葉に男子生徒の視線はこちらに向いた。

それに顔を傾けると慌てて視線をそらされる。

そしてクラサメの声が聞こえた。

「NO NAME、悪いが少し待っていてくれ」

「ん、分かった。」

急ぎの用だったようでクラサメは私に待っている場所を指定すると、

駆け足で消えていった。

私が待っていろと言われた場所は生徒が誰もいない庭のような所。

ここは心地よい日差しがあたっていて、歩いていて気持ちが良かった、

そして見つけた柵。この先には何があるのだろうと、高鳴る胸に任せて

その柵に手をかけて、そこに入った。


「……ここは…」

前に聞いたことがある、死んでいった人のためのお墓があるということ。

墓地。

墓地のようなその場所はひどく綺麗に見えた。

「貴方は?」

急に聞こえた声にびっくりして振り返ると、そこには魔導院の生徒の女の子の姿あった

その瞳は鋭く細められていて、私を警戒している様子だった。

「私は、怪しい者ではないです」

候補生の服も着用してないので警戒するのは当たり前なのだが、

今はどうやって説明するか考えるが、化身のことは言ってはいけないし。

混乱する頭の中、女の子の声は響いた。

「もしかして魔法局の人…?」

「あ…そう、です。」

「やっぱり、すいません。警戒はしていましたけど、朱雀の人のような気がして」

それに大丈夫、と笑うと女の子も笑った。

「こんなところに人がいるなんて珍しいから…」

確かに自分とこの子以外誰もいないこの場所は、普段人がしょっちゅうくるような場所ではない。

「貴方は、候補生だよね」

よく見ると彼女が羽織っているのは朱いマントだった。

それはエースのマントと重なって、ふと考えがよぎった。

「そう、私は0組の候補生なの」

「すごいっ、じゃあエースも0組なの?」

「エース、エースのことを知ってるの?」

朱いマントが一緒なのは同じ組だから。

エースを知っていると彼女がいうと、0組のエースはすごく強いんだと感じた。

確かあの時も助けてもらった。白虎のルシが襲撃してきた時も。

朱いマントの候補生が来ていた。

「うん、」

「そっかあ、隅におけないなあ」

そこから話しは弾んで結局彼女とは仲良くなった。

そして授業が始まるからと言って別れを告げた時、ふいに彼女の声が聞こえた。

「あ、私はレム!貴方は?」

「私はNO NAMEっ、宜しくね!」

それに手を降ってくれたレムの姿を見送ると、自分もあの庭に戻らなければと

足を早めた。

すると、そこには既にクラサメの姿があり、私を探しているようだった。

「クラサメっ」

駆け寄れば墓地に行っていたことを話すと、クラサメの口は開いた。

「勝手に行動するな、」

それは私の心配をしてくれている、ということにもとれたが、

今日のクラサメの態度にやはり不可思議なものを感じる

クラサメを見上げれば相変わらず瞳は合わないまま。

「……ねぇ、どうかしたの?」

その質問に黙って答えないクラサメの腕を掴むと、クラサメの瞳は細められた。

「なんかおかしいよ、何かあったの?」

「なんの、ことだ…」

そう答えたクラサメだったが、

きっと彼は分かってる。自分の行動について。

なんで、私から目をそらすのだろう。

いつもクラサメは私の瞳をしっかり見てくれたのに、

なんで私を見てくれないんだろう。

「離してくれ」

その言葉にぴくりとクラサメの腕を握っていた手が動いた。

「嫌だよ、だってクラサメ…私のこと全然見てくれない…っ」

クラサメを見つめると、驚いたようにクラサメの瞳は見開かれた。

やっと目と目があったそのクラサメの瞳はユラユラ揺れてるようだった。

それをしっかりと見つめると、見開いたその瞳は細くなった。

「どうすればいい、」

途切れて聞こえたクラサメの言葉と一緒に掴んでいた手は逆に掴まれてしまい、

庭の壁に押し当てられた。

その衝撃をもろに背中に感じて顔を歪めると、私の両腕を掴むクラサメの手は強くなる

「どうやってお前を見ればいい…?」

小さく、でも強く放たれた言葉の中に何かを感じた。

それは恐怖でもない、嬉しい思いでもないもの。

ただ苦しげに揺れるクラサメの瞳を眺めることしかできなかった。









   

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