私 | ナノ

腹がたつ
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綺麗に輝く星空、その景色から視線を逸らして視界に写ったのははチョコボの群れだった

その奥で白い肌が見えた気がした、

NO NAMEだと確信するのに時間は要らなかったが、その小さな身体が揺らいだ。

そしてゆっくりとその身体を抱きとめるように伸びた手に瞳を見開いた。

「…、」

確かに抱きしめられていたNO NAMEの身体だった。

誰が抱きしめているのかは分からない、ただ黄色いチョコボ達の群れの隙間から見える

ほんの一瞬の出来事に、目がそらせない。

自分の目的など忘れて、今まで歩いてきた道を逆走する。

さっきより速い足に細まっている瞳、自分が今どんな顔をしているのかなんて

分からない。

ただ居心地の悪いものだけ残って、消えない。

今すぐ愛用の剣で何もかも切り裂いてしまいたい、全部輝く銀にしてしまいたい。

そんな衝動にかられながらも、魔導院へと戻る魔法陣に入った。


「……どうしたの?」


偶然会ったエミナはひどく歪んだ顔をしてこちらを見る。

焦っているようでなんだかぎこちないエミナは首をかたむけた。


「なんでもない」

そっけない言葉だけ軽く返すつもりだったのに妙に重たい言葉になってしまっただろうか

今はそんなことは気にしてられない。

誰でもいい、切り裂いてしまいたい。

すっとエミナの横を通り過ぎる、声を掛けるわけでもないエミナの小さな声が聞こえたが

聞こえないふりをしておいた。

廊下の角を曲がったところで、今ままで歩むことだけをしていた足が止まった。

右肩が脱落したように壁につくと、大きなため息が体の下から湧き上がって、

眉をしかめた。

こんなの、違う。

「なんだっていうんだ……」

暗く吐きでた言葉を認めたくない。




妙に腹が立つ。




   

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