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朱雀のために
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「今日はありがとう、あいつのことよろしくお願いします」

魔法局の門の前にたって、深く頭を下げた人物は顔を挙げると、頬を緩めた。

それに一瞬胸の中から知っている感情が弾けた気がした。

確かに血が繋がっているだけある、笑い方が似ている。

「俺の“よろしく”は…あんたには伝わってると思う」

あいつを一目だけでも見せてくれた人だからなぁ、と言って再び頬を緩める。

「貴方が地方にいるならば……逃げたほうがいい」

八席議会で決定がくだされた。

もうすぐ戦争が始まる、生き延びたいのなら、すぐにでも逃げたほうがいい。

「俺さ、まだあんたに名前教えてなかったな…俺は、カイル」

全くかみ合わない言葉に顔を歪めると、カイルの首が傾いた。

ゆっくりとつり上がった口元と細まった瞳。

そこから真の強い声が発せられた。

「クラサメ…俺は逃げない」

「……死んでもいいのか」

「…俺は兵士ではないけれど、戦うよ…きっとNO NAMEもこの国のために、戦うだろうから、一人で背負わせるわけにはいかない」

開かれた瞳から漏れる決意の意思が、痛いほど伝わった。

この国のために命を落とす、この国のために戦おう。

当たり前の事だとばかり思っていたことは、実は受け入れられないことになっていたのかもしれない。

なら目の前の男のほうがよっぽと朱雀に対する忠誠心が強いのではないか、

いや、忠誠心ではない。

NO NAMEに対する、想いか…。

「クラサメは?」

「どうゆうことだ…?」

「朱雀のためなら死ねるか?」

愚問だ、当たり前だろう。

そんなこと、すぐに返せる言葉のはずだった、頷いてしっかりとした声が出るはずだった

「…あぁ、」


なのに、何かが喉につっかえて、

息苦しい気持ちになったのはなぜだ。




答えがすぐに出なかったのは、なぜだ


















   

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