「ねえイタチ、遊ぼうよお」
「おまえはいつまで子供のつもりなんだ…」
「いいじゃん、わたしガキだもん」

わたしの恋人はなんというかなかなか読めない人です、淡泊なのか貪欲なのかもいまいちわからない人です。わたしがぶうーと拗ねるとイタチは頬をむにっとつねって微笑みます。イタチの茶目っ気のある笑顔なんて数えるくらいしか見たことがないので、わたしはわざと拗ねてやるのです。そして頬をつねった後は絶対にわたしの我が儘を聞いてくれるのです。それがわかっているからわたしはイタチの負担になることなど知らないふりして拗ねるような我が儘な女の子になってしまいました

「明日は暗部の仕事があるからな、一時間だけだぞ」
「…サスケくんはいいの?」
「…おまえは結局何をしてほしいんだ?」
「うーん、わかんない」
「許せ…また今度だ」

でもイタチの負担になりたくないわたしはなんだかんだで我が儘を突き通せません。それは、多分悪いことではないと思います。サスケくんをなだめるようにしてわたしはイタチになだめられていますが、それはサスケくんと同じ精神年齢だと思われているからでしょうか。だからわたしから喧嘩をふっかけても相手にすらされないのでしょうか。でもわたしは満足です、イタチと同じ時間を共有するだけで幸せだからです。わたしはこんな日々が何一つ変わらず、多分ずっとずっとわたしたちが大人になるまで続くと思っていました、続くと確信していました




しかし、月がとても綺麗な夜に事件は起こりました。

わたしはその晩なかなか寝付けず、夜道を散歩しようと思い、家から抜け出しました。満月がとても綺麗でした。すると、道の真ん中に見馴れた人影を見つけました。あれはイタチだ、わたしは走って愛しい人の名を呼びます。しかし振り向いたその表情はわたしの見たことのないような表情でした。そしてイタチの傍らには、人がうつぶせに倒れていました。それを見たわたしは、いつものようにおどけてみせることも、笑うこともできませんでした

「、おまえか…」
「イ、タチ…?」
「見てしまったな」
「…はあ?どうゆうこと?てゆうか、な、にしてんの…?」
「見ればわかるだろう」

確かにイタチの行ったことは明確に理解できました、しかしわたしの頭は理解しようとしませんでした。何故かというと夢にも思えるほど現実味がなかったからです、イタチが人を殺めるはずないからです。なかなか読めない人だと言ってもまさか、あの愛しい愛しいイタチがそんなわけあるのか、と

「悪い…」

悪い、という言葉が何を意味しているのか理解するのはとてもたやすいことで、彼の写輪眼がそれの証拠です。つまるところは、わたしはイタチの手によって最期を迎える、ということです。わたしに向けてイタチは二重スパイのことからすべて余すことなく話します。まるで最後だから、とでも言うように。イタチは里を抜けるそうで、おまえに心配かけるのは御免だ、なんて言うのです。イタチの語り口からは恋人も殺せ、という命令が下っていたということもうかがえました

「…ごめん、「また今度」はなかったな」

最後だとでもいうならキスをちょうだいよ、なんてわたしは我が儘を言ってやります。わたしの目からはしょっぱい水が一滴二滴と零れてきます、どうしてでしょう、実感が湧いて来たからなのでしょうか。わたしは謝るくらいならそんな約束いらなかったなあ、なんて思います。苦しい苦しい苦しい苦しい、そんな心の叫びがはたしてあなたに届くのでしょうか

「…最後にひとつ、」

イタチはわたしに触れるようなキスをくれました。わたしの我が儘を叶えてくれたのです。涙で滲んでそれすらも現実味はありませんでした。あなたはわたしのことをちゃんと愛してくれていたのでしょうか、わたしはあなたのことをちゃんと愛せていたのでしょうか。ふたりを月光が寂しく照らしていました、これが本当に最期だと



(見間違いでなければ、わたしが最期に見たのは、泣いているあなたでした)(ああ、さよなら、)





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110810 ちせ
 title by 花洩

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