野球部の練習が終わってへとへとに疲れながら家へと帰る道ではとても星がきれいに見えたりするのはどうしてなんだろうか。その疑問を毎日なにかに向かって問いながら、ひとりっきりで自転車をゆっくりと引き、歩く。ああ、満天の星空だなあ。星がこぼれてきてしまいそうだ。そうやって空を眺めて、ごく当たり前に今日も一日が終わるはずだったのに、…あんなもの見るから、思い出してしまった
「もうまっ暗だね」
「俺、家まで送るよ」
「わ、ごめんね、ありがとう」
たぶん、地元の中学生かな。中学特有のたくさんの荷物を抱えながら、並んで歩いてきた男女ふたり。すっごくにこにこしてて、ああこいつらしあわせなんだろうなって。まるでさ、昔の自分を見てるみたいだなあって、すれ違うふたりに、ふ、と重ねてしまった
(ごめんね栄口、こんなに暗くなるまで)
(大丈夫だけど、それより親、心配しない?)
(んーたぶん大丈夫だよ)
ほんとにすきだった。今ではもう、過去形でしか表現しちゃいけないような気がする。あのときの気持ちを、今、知ったふうに語りたくない。いや、語っちゃいけないと思う。なによりも透明で綺麗で触れたら壊れてしまうんじゃないかっていうあの気持ち、俺は一体どこに忘れてきたんだろう。俺の中であの子はまるで光るあの星みたいだった。だってあの子と過ごしたあの期間は、本当に本当にほんとうに、
(ねーちょっと栄口!)
(ん?)
(見てよめっちゃ星きれい!)
(わあほんとだ!)
もう、会うこともないんだろう。皮肉なものだなあ本当に。あの日から、星空だけは全然変わらない。立ち止まって見上げた星空に、一瞬だけあの子の笑顔をみたきがした。まばたきをしたら、もう見えなくなってしまったけど。
「今日は星があかるいね」
「本当だ、きれいだね」
瞬
き
を
す
る
合
間
に
ものすごく遠くへ行ってしまったあなたへ
―――――――
110822 ちせ