最近買った真っ赤なお気に入りのスニーカーを履いてわたしは今日も西浦高校へ登校する。周りに誰もいないのを確認して思わずスキップをしてしまったくらい、どうやら自分でも気付かないくらい今日は機嫌が良いらしい。昨日の夜は孝ちゃんと一緒に行くライブのチケットの申し込みもした、当たるといいなあ!
「孝ちゃーん」
ぞろぞろと着替え終わった野球部員が出てくる部室からなかなか孝ちゃんが出てこない。どうしたんだろう、孝ちゃんが出てくるのはいつも早いほうなのに。わたしは気になって孝ちゃんだけが残っているであろう部室に勝手に入ってしまった。むわぁん。うう、ここってこんなに男臭いんだ
「…孝ちゃんいますかー?」
二三歩足を進めるとそこには開いた携帯を片手に壁にもたれかかって座っている孝ちゃんがいた。孝ちゃんはわたしに気付くと身体をびくんと跳ねさせ、慌てて携帯をパタンと閉じた。孝ちゃんはいつものようにエナメルバックを持って立ち上がり部室を出ようとする
「名前ごめん、気付かなかった!」
「あ、ううん別に大丈夫」
大丈夫、なわけあるか。いや、大丈夫じゃないのはわたしじゃなくて孝ちゃんだろ。心配するだろうがバカ孝ちゃん。今の孝ちゃんの顔は、わたしが見たこともないくらいの泣きそうな顔、だった
「…どしたの、孝ちゃん」
つい、孝ちゃんの泣きそうな顔の理由を尋ねてしまえば孝ちゃんは口をへの字に曲げて困ったように頭を掻くだけだった。
「………なんでもねぇ、」
孝ちゃんが何でもないって言うときなんて何かあるときだって分かってるっつーの。昔からそうだ、孝ちゃんは心配かけまいと嘘ばっかり吐く。嘘ばっかり吐かせてるのは紛れもない私だけど。あーあ、わたしのバカ。孝ちゃんのバカ。気になるじゃん。