「白蘭さん、あの羽ちょっと出してみてください」

「いいけど、なんで?」
「もふもふしたい!」


彼女は自身と同じくらいよく分からない生き物だ、と最近思うようになった。そこらへんにいる程々に分別ある一般の成人女性と変わらない時もあれば、今のように目を子どもと同じくらい輝かせながら僕に甘えてくる時もある。僕は読んでいた雑誌を閉じ、彼女に背を向けて羽を控えめに出した。


「もふもふーあれ、でも前見たときよりちっちゃい」
「そりゃちっちゃくしてるからね」
「ええーもっと大きいの出してくださいよー!」
「羽が散らばっちゃうよ」
「そんなの気にしないってのが白蘭スタイルでしょう」


そりゃそうだ。これは一本とられちゃったなと含み笑いしながら、お望み通り羽を先程より広げてあげると、背中から感嘆の声があがった。だけど遠慮なく羽をぐいぐい引っ張るので、正直ちょっと痛い。それにされるがままってのも何となく気にくわない。僕は彼女の方に振り向き、わざと満面の笑みを作って言葉を投げかけた。


「ね、お礼になんかあるんだよね」


首を傾げた彼女の肩を、軽く押すとあっけなく後ろへ倒れ込んだ。意味を理解して顔を真っ赤にした頃にはもう遅いんだよ。暴れる彼女を無理矢理押さえつけて、首筋に軽くキスをした。


「真っ昼間から何やろうとしてるんですか!ヘンタイ!」
「名前ちゃんが遠慮なく僕の羽で遊ぶからだよ。知ってた?天使の性感帯って羽にもあるんだ」「う、うそ」
「ホント」


そう言うと彼女の抵抗がとたんに大人しくなった。彼女は少し申し訳なさそうに僕を見つめた。本当に分かりやすい女の子。彼女は疑う事はあるけれど、本気で疑う事はできないんだ。天使のような羽を持っている僕よりも彼女は天使らしい。なんだかおかしくて彼女の首元に顔を埋めて笑いを堪えた。


「あ、嘘ですね!嘘は駄目ですよ!」
「違うよ、ほんとだってば」
「笑ってるじゃないですか!」
「知ってた?天使は感じると」
「もう信じませんよ!」


僕の押さえつけが弱くなった隙に彼女はするりと抜け出してしまった。壁にべったりと背をつけて睨むその顔は真っ赤っか。それがまた僕のツボを刺激する。


「ごめんごめん。もう何もしないからさ。ほら羽触りたくないの?いくらでも触っていいからおいでよ」


ぱたぱたと羽を動かしてみると、好奇心に見事に負けた彼女はおずおずとこちらに寄ってきた。

ほらね、いとも簡単に騙される。

羽に触れようとした彼女の手を掴んで、自分の腕の中にすっぽりと抱き締める。その上から包み込むように自分の羽を前に広げた。


「何もしないって!」
「何もしないってば。この位いいだろ」


怒っている彼女を宥めようと羽の先で頬を撫でると、彼女は器用ですねと眉を八の字に曲げ頬を緩めてくすぐったそうに笑った。僕は思わず頬ずりをした。ああ、


「だからほっとけないんだ」


?マークを浮かべる彼女の髪に何でもないよと何度もキスをして沸き上がる感情を押し留めた。



サンデー
アフタヌーン


こんな子を置いて
何処かに行けるわけなんて



knuo 120523
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