記憶の彼方
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序章
「疲れた……」
帰ってくるなりベッドにダイブ。
外はもう夕日が沈み、街灯がつき始めていた。
看護師2年目になる私はやっと業務に慣れてきて、仕事に楽しさを感じるようになってきた。
出来ることが増えてきた分、やる事が多くて大変なんだけど。
でも、やりがいがあって楽しい。
まさに天職だと感じていた。
「でも、今日はきつかった……」
今日は急変もあり、忙しい1日だった。
ベッドの上で目を閉じ一時の休息を得た後、お腹が食べ物を欲していることに気付く。
「……お腹空いた。カップラーメンでいいや」
こんな日はご飯を作る気なんておきない。
さっさと食べてゲームをしたかった。
私は待ち時間3分のところ1分で蓋をあけ、ラーメンをすすり始めた。
早々にラーメンを食べ終えるとゲームコントローラーに手を伸ばす。
「これこれ♪」
お楽しみの時間到来。
今一番大好きなゲーム、FFX。
昔から好きだったけど、HD版なるものが発売され再燃中だった。
「アーロン様♪今逢いにゆきますぅ♪」
一番好きなキャラクター、赤い服に身を包んだその人の名前を呼びながらスイッチを入れた。
いつも通り、楽しいゲームタイムの始まり。
のハズだった―――
「おい!ジェクト!早くしろ!」
「ちったぁ待ってくれてもいいじゃねえか、なぁブラスカ?」
「ははは、そうだな。アーロン、もう少し待ってくれないか?」
「な!ブラスカ様は甘すぎます!だから早く準備をしておけと……」
宿の一室で旅の準備をしている一行。
上半身裸のジェクトと呼ばれた男がゆっくりとマイペースに荷物をまとめていると、
「……俺は先に外で待ってます」
赤い服に身を包んだアーロンと呼ばれた男が、溜め息混じりに部屋の外へ出ていった。
「あいつはこの旅の重要さをわかっているのか……」
アーロンはぶつぶつと不満を洩らしながら宿の出口へ向かった。
ここは小さな小さな村。
村人の姿もほとんどない。
アーロンは宿のドアを開けて大きな溜め息を一つついた。
すると―――
ふわぁっ……
そんな効果音と共に何もなかった目の前の草原が淡い光に包まれた。
「っ……!なんだ!?」
いきなりの事に目を見張る。
徐々に淡い光の中に何か形のあるものが形成されていく。
魔物か!?
そう思えば体は勝手に動く。
アーロンは刀の柄に手を添え、構えていた。
どれくらいその様子を見ていただろうか。
光は四散していき、光に包まれていたモノが明らかになった。
より一層警戒を強め、いつでも踏み込めるよう腰を落とす。
……が、
「……女……?」
そこにいたのは全く想像していなかった存在。
見たこともない服に身を包んだ女だった。
お互いに何事かと目を開いて見つめ合う。
女の胸には煌々と輝くペンダントが躍っていた。
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