なのに…何故?

なぜ、一条雅…生徒会副会長がきたのかな



「どーも」


怜は副会長に視線を合わせずに挨拶をした
と言っても俺も 生徒会 ということで一切みないようにしていた。
関わりを持ってはいけない。俺の今後の生活の一番重要な部分なんだ。




が、




「こんばんは、水野君も一緒だね。…で、こちらはどちら様かな」

気づかれた



こちら、というのが俺だと気づいた俺は急いで挨拶をしようとした。

シカトはできない。天下の生徒会副会長様に。



「ど、どうも!田中憂でっ!?」

「ん?」




顔をあげて挨拶をしようと副会長の顔を見るとそこには見知った顔があった…。

忘れたことのない、その顔はマサさんそのものだった……。






マサさんは中1の時俺を助けてくれた人


「マ、」

「ま?」



「あ、いや…なんでもないです」

ここにいるのは一条雅。マサさんではない。きっと理由があるはず。今、マサさんと呼んだら迷惑がかかってしまうかもしれない。幸い、相手も俺だと気づいていないみたいだし。


「?……田中、憂くんでいいのかな」

「あ、はいっ」


「僕は知ってると思うけど生徒会副会長の一条雅。よろしくね」


笑顔で手を差し出されたので俺もそれに応えて握手をした。
自分より冷えた手に触れる。

そして、彼は呟いた。

「ユウ…か」

「え?」



「いや、なんでもないよ」



王子スマイル炸裂。直視するには眩しすぎる笑顔だった。


途端に響く歓喜の叫びと、罵声


『キャ―!』
『あの一条様が握手!??』
『ありえない!あの平凡がっ』
『なんでぇえ!!』



うるさい…な


「ごめんね?」


俺の表情の変化を読んだのか、副会長が謝ってきた
自分のせいでこうなってる自覚はあるらしい


「えっいや?そんなっ副会長が悪い訳じゃないですから…」


うるさいのは彼らだ。
それに、副会長様に謝罪だなんて、申し訳ない。


「そう?ありがとう」


王子スマイルとは違う、素朴だけど、とてもきれいな笑顔だった。



「、いやっ…別に、」

「クス」


あまりに綺麗でテンパって俺が赤くなりどもると副会長が笑った
恥ずかしさでまた顔が赤くなる。


「一条さんそろそろ帰ったらどうですか?」



横から怜が不機嫌を露わにし、副会長を睨みつけながら言った


「そうだね、じゃあまた」


笑顔を最後に見せ、彼は去っていった。




その後ろ姿を見送った。
完全にこの食堂から副会長がいなくなったと確認した後、真哉が嫌悪を露わにした。


「じゃあまた、じゃないよ!本当に!」

「真哉は副会長が嫌いなの?」

「生徒会そのものが嫌いなの!」

「あ、そうなんだ…」



マサさんはいい人なんだけどなぁ…。俺にとっては、とっても大切な人。


「どうした?」

「あ…いや、なんでそんなに嫌いなのかな?って」



「副会長はそこまでじゃないけど会長と会計が一番嫌い」

「ふーん」

「でもやっぱ生徒会は全部好きじゃないよ。憂ちゃん近づいちゃ駄目だからね?」

「わかってるよ」


大切な人といえど、彼は『生徒会』だから。
かかわりを持ってはいけないひとだから。

俺の今後の平凡生活のためにも。
……目の前の二人のせいでほぼ崩れかかってるいるのだが…。


なんて思いは心にしまって、久しぶりに友人との食事を楽しんだ。







「じゃあ、戻るか」

「そうだねー」


真哉も部屋に戻って俺等はリビングでだらけていた


「なんか、今日は疲れた…」

普段出会わないような人に出会った。
食事をした。


「なんでだ?」

「…」



チラッと怜をみる


「?」

「ハァ…なんでだろうな」



お前のせいだ。なんて言えなかった。
俺と仲良くしたいなんて言った物好きで、俺の目を見てそれでも仲良くしてくれてる。

こんな目をしてれば小学生の時はイジメの対象になる。
小学生は皆と同じになりたがる。みんながもっているから、と理由で物を欲しがる。みんながしているから。みんなと違う『俺』をいじめる



流石に中学ではないと思っていたがそうでもなかった
寧ろ小学生より残酷だった



親がいない俺は叔母夫婦に養って貰っていたが叔母夫婦も俺を異形のモノという目で俺を見ていた。


だれもが、忌み嫌う俺


それを綺麗と言ってくれたのは肉親以外では怜が三人目だ。


両親は綺麗だ、と言ってくれた。だから、俺はこの目を忌み嫌ったりはしない。両親が褒めてくれたものを俺は捨てたくない






「憂…?」

「あ、ごめん」


俺は、自分に好意を抱いてくれている人間を突き放せるほど出来た人間じゃない。



「いや、別になんでもなかったんだけどな。大丈夫か?」

「あぁ、大丈夫」





ピピピ…――


風呂ができた音がした



「風呂、先入って良いか?」

「どーぞ」



怜はそう返事をするとリビングのソファーに寝転んだ。





カチャ




眼鏡を置いて風呂に入る

鏡に映るのは染めた黒髪と赤い目

父が綺麗だと誉めてくれてた髪を黒に染めてしまった…。
本当は鬘とかスプレーの方法もあったんだけどこの学園は全寮制の二人部屋だから同室者にバレては意味がないので染める方法にしたのだ。




俺は風呂を早々にあがった



夜なので眼鏡を洗面所に置きっぱにし目に入ったら困るので前髪を小さいヘアピン上げてリビングに戻った。
基本髪はタオルドライ。ドライヤーは使わない主義だ。


「風呂空いたぞ」

リビングにいる怜に声をかける


「おう…っ、」



後ろをふり向いた怜の目が若干見開いた。



「ん?」

「色っぽ…」


………なんなんだ。こいつは。




「意味わかんないこと言ってないで早く入れよ」

のどが渇いたので冷蔵庫のもとへ歩こうとしたら後ろから怜が抱きついてきた



「まじだって。本当に、きれい」

「おい、離せって」

「ん、いい匂い」

「嗅ぐな。暑い、離れて」


首もとで鼻をすり付けられてはくすぐったいに決まってる


「そんな怒んなよ」

「早く入ってこいって」

「わかったよ。けち」

「俺ちょっと1階のコンビニ行ってくる」

「わかった」

「じゃあな」



髪をとめるピンの大きいやつが欲しい。眼鏡をしない時髪をあげなきゃ髪が目に入ると痛くてしょーがないし小さいヘアピンはすぐなくなるから嫌いだ。


無くさなきゃいい話なのは俺だってわかってる。でもなくなるんだからしょうがないだろう。





――――ガチャ


怜が洗面所に入ると眼鏡が置いてあった



「あ、おいっ眼鏡忘れてるぞ!」


怜が発見して声をかけるが部屋に憂の姿はもうなかった



「まじかよ…」








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