高校1年生の俺、田中 憂は入学式に参加していた




俺は中学からの持ち上がり組


この学園は金持ち坊ちゃんが多く通う全寮制の男子校
巷で有名な王道?学園らしい

俺は平凡で
顔は中の中
成績も中の中
家柄も中の中

そんな俺にも平凡じゃないとこが一つある。それが色。
俺の瞳は色素が薄く赤茶。赤にかなり近い、赤茶。おかげで日光を直接目に入れるのは致命的で数分は何も見えなくなってしまう。

なので、特殊加工された眼鏡をかけて前髪を長めにすれば通常生活に問題はなく過ごしている。日光がダメなだけなので夜は眼鏡なしで生活ができる。

後は瞳とお揃いの赤茶色の髪。染めてるわけじゃないのだけれど、どうにも俺の体は色素に関しておかしいらしい。肌もかなり白っぽく日焼けはしても赤くなってすぐ元通り。

女の子に羨ましがられることが多々あり、服が少し中性的だと女に間違えられたり。



ところで、俺が今入学した学園は



『全寮制男子校の私立藤城学園』



そう。わかるやつはわかるだろう?
ホモってやつが多いのだ。噂では9割がホモとかなんとか。中学の時に入った俺はかなりビビった。


しかしこの学園の奴らは美形にしか興味を示さない。つまり俺は対象外だった。
被害を被らないとわかった俺はひっそり過ごすことに決めた。

生徒会に近付かず。成績も目立たず。教室の隅で過ごす。
そうして俺は中学時代は平々凡々に過ごしてこれた。そして、これからの高校三年間もそうやって過ごす予定だ。



本当に仲いいという友人ができずに、青春?そんなもの男子校にいる時点で無いよ。
そもそも友達すらいない俺が恋人ができるわけがない。





そんなことを想いかえしているが今、一応入学式に参加している。

どこぞのアイドルがいるんだ?と思うような声が響く。
彼らは所謂、信者。
どこからこの俗に言う黄色い声を出しているのかが謎。だけど、高い声の中にやはり太い声が響いていて何とも言えない気分になる。


その声の先には生徒会。俺の平凡な生活を保持するのにはこの生徒会が要。
生徒会に近づいたら最期。俺の一生が終わる。



何故かというと、第一に生徒会はみんなのアイドルだから。中には神とさえ思っている人が居る。
俺は別に誰も崇めてはないけど、そんな人はごく少数。

そんな神様に近づき汚す人物には制裁が下される。
制裁とか言っているが要は…酷いイジメが生じる。

イジメと括って良いのかは謎だが確かに最初は忠告。そして次に軽いいじめ。最後には強姦やらなんやらの犯罪が出てきてしまうのだ。

良家の坊ちゃんたちは家の力でそれをもみ消してしまう。よってこれらが表立って問題になったりなんてしない。
教師も結局は生徒にびびってる奴が多いから助けてもらうこともできないで、いじめられた奴はやめていくんだ。

中学に俺が丁度入ったときは有名な先輩が高等部にあがってたしまったらしいので俺にはこの高校の生徒会の中に知らない人が多い。


絶大な人気を誇っている生徒会

会長は王様みたいなカリスマ性があってワイルドなイケメン
副会長は煌びやかな風格はまるでどこぞの王子様みたいなイケメン
会計は綺麗に染めた金髪と偽物たけどとても綺麗な瞳で見つめられたらもう…なイケメン
書記は貫禄があって無口でクールなとこがたまらないイケメン




と、俺は見たことないがなんか転校してすぐの時隣の席のやつが言ってた。すごく興味ない。






『続きまして、校長先生の話。みなさん…静かに聞きましょう』



にこり、と王子様スマイルを振りまくと椅子に座っていった彼はこの学園の生徒会副会長様、一条 雅様

色素の薄い髪がさらさらと動くたびに靡く。そのさまは高級感に満ちていて、本当に王子様みたいだった。ちゃんと見るのは今日が初めてだが、とても、綺麗な人だと遠目で分かる。

あの人に似ている。あの人も神の使いのような綺麗さを持ち合わせていたから。




校長の挨拶中、生徒のほとんどがその副会長のスマイルに惚れ惚れとしていた。
一応この学校の一番偉い人は理事長であり校長ではないらしいが、なぜか理事長はこういう場には出ない。
理事長の姿は生徒会他、数名しか見たことがない。噂では、やっばいイケメンかやっばいブスかの二通りある。


先ほどの副会長の言った通り黙って校長の話を聞いて…いや、聞かずに生徒会を鑑賞している生徒たち。
俺は生徒会に興味がなければ校長にも興味がない。だんだんまぶたが重くなってきた。





いつのまにか寝ていたらしく、気づいたら入学式は終わっていた。




入学式の後は流れ解散だったので目が覚めた頃はまばらにしか人は残っていなかった。俺は慌てて寮に向かった。

寮は1、2階は共同スペースで、3階が1年。4階が2年。5階が3年。6階が生徒会だ。

基本は2人で一部屋。だが生徒会は一人部屋で、4人しかいないのに一フロアを独占している。なんたる贅沢。
だが確かに生徒会が同じフロアにいては混乱が起きてしまうので仕方のないことだ。




俺が今持っているカードは青に金のラインのデザイン。このカードは鍵であり、この学園での財布だ。そしてこのデザインは一年生である証。二年は緑に金で三年は赤に金。

そして、生徒会は黒に金。


これはネクタイにも使われている学年を知る術だ。ネクタイは拘束ではあるがたまにしていない生徒がいるので、これだけに頼る事はできない。





さて 俺は何号室だろうか。そう思いカードの右上の数字を見る。そこに部屋番号が記されているのだ。



「315号室…か」

部屋の前に行くとネームプレートがあった。

『田中 憂 神田 怜』


「神田…怜…?」


確か…聞いたことあるぞ?…平凡の俺が聞いたことあるのだ……かなりの有名人だ…。



「どうしようもないこともある。うん入ろう」


どうしようかと思ったが同室者っていうのは個人で決められるものじゃない。
基本は成績順だし。たまに違うけど。これで有名人と同じ部屋で制裁を受けた人なんて聞いたことはない。

カードキーをスライドして鍵の開いた音がしたので俺はドアノブに手を伸ばし扉を開けた



「…お、お邪魔します」

「――!、!」


何か奥の部屋で揉めている声がした。何事かと思って身を乗り出そうとした途端に扉が思い切り開いて玄関口に2人がやってきた。

と、いうより、神田が小さい奴を追い出そうとしている様子だった。こういう状態が、どういう状態か。わかるくらいにここの風習には慣れた。


「さっきからうるせぇんだよ。一回ヤったからって勘違いしてんじゃねぇ。もう来るな」

「そ、そんなっ怜様!」

「じゃーな」



ガチャリという音がして扉が閉まる。話しに聞いていてもここまで濃い現場を目の前にするのは初めてで唖然としていた。俺は傍観者さながら空気であった。

しかし、玄関で追い出した後、振り返った奴と目があった。一応同室者になるわけなのであいさつした方がいいのか、でも先ほどの光景になんかコメントは必要か。そんな無駄なことを考えながらとりあえず自己紹介を、と思い口を開こうとしたら先に神田が声をかけた。



「…てめぇ、誰だ」

「えっ?…あ、俺」


ものすごい勢いで威嚇された…。
神田は一年の中で一番生徒会入りが近い奴だと聞いたことがある。

生徒会に入れる条件は『頭が良い・家が良い・顔が良い』だ。

なかでも家と顔は必須。だから生徒会は美形軍団。こんな高校生のガキがついていきたいなんて思うのは頭がいいだけじゃダメなんだよね。

神田は顔良し家良し頭は中だ。生徒会のメンバーが受け入れる体制だということはとても珍しいことで、それを断るのはもっと珍しい。

今俺の持っている巻だの情報をフルで稼働して今どうすればいいかを考えていると我慢が出来なかったらしい神田が再び声をかけてきた。


「…ヤりてぇってか?」

「は?」


思いもよらない言葉だった。あまりの突然の発言に俺は何を言っているのか一瞬理解に遅れた。だが、神田はそのまま続けた



「お前みたいな平凡には興味ねーよ。帰れ」

「…っ」

「てかどーやって入ったんだ平凡。あんまし調子乗ってっとぶっ殺すぞ平凡」


俺の名前を知らないらしい神田は俺のことをただひたすらに平凡と呼ぶ。にしたって呼びすぎだろう。俺にだって安いプライド持ち合わせてる。平凡と馬鹿にされるのは納得いかない。お前が派手なだけだ。しかも俺はノンケだ。お前と違ってホモじゃねぇ。


「聞こえなかったのか平凡。さっさと出てけって言ってんだろ平凡」



我慢、ならん


「おまえ、…」

「あぁ゛?」

「平凡平凡言ってんなよ不良!大体俺はお前に抱かれたいなんてこれっぽっちも思っちゃいねぇんだよ!勘違いしてんじゃねぇぞっ!頭噴いてんじゃねぇのか!?お前と違ってノンケなんだよ!男になんて興味がない!一緒にするな!!外見ばっか気にしてんなよクソ!」




「…」

「ふーっ…は、………………あー……」


あぁ、さらば俺の平凡生活。むしろ俺の人生。



「へぇ…言うね、お前。見かけによらず」

「っ…」

また見かけの話かよ。ていうか近い。近づいてくる。なんでだ。殴るためか。やばい。


「逃がさねーよ」

「いや、ちょ…まっ」

どうにか逃げ出したくて視線を右へ左へ。
そんなことをしている間に俺は玄関まで追い詰められ右と左には神田の腕があり、どこへも逃げれなくなってしまった。

神田の顔を見上げて、この頭がものすごい勢いで俺の頭に振り落とされるのかもしれない。と考える。
そしたら俺はきっと病院行きだ。



「面白い奴もいたんだな…この学園にも」

そう言いながら神田は俺の首筋に近づいた

「はっ?…な、なに、!」
「黙ってろ」


そう言うや否や神田は俺の首筋を舐めあげた



「な、ひっ!やめっ…」


ぬめっとして、気持ち悪いっ!!鳥肌が半端じゃない!!


「顔平凡の癖に声は…結構…イイもんだな」


意味の解らない事を言っていないでどいてくれ


「はなっせ!ホモっ」

「…別にホモじゃねぇよ」


すると 首筋に痛みが走った。チクッって可愛い感じではない激痛だった。


「い゙っ!?」

「どうだ」


噛まれた…………。納得した様子で神田が俺から離れる。
俺はあまりの激痛に涙を浮かべながら悶絶した。


「いってぇ!!ばか!痛い!」

「気持ちよくしてやろうとしたらお前が暴言吐くからだ」

「きもちよっ…!?」


あまりの衝撃的な発言に顔に熱が集まる。こいつは本物のやばい奴だ!


「ん?もっかいやるか?」


ニヤニヤしながら聞く神田。勢いよく俺は首を横に振った。
というか、血出てる。手で触ればヒリッとした痛みが走った。



「そーいや お前名前は?」

「山田 太郎」


「…そうかそうかそんなにヤって欲しいのか」

「っ、田中憂だ」

「……ユウ?」


何か引っかかりがある。といった風に俺の名前を呼ぶ。憂なんて名前結構ありきたりだと思ったんだが…違うのか?


「…そうか憂な。俺は神田 怜。お前なら怜って呼んで良いぞ」

「遠慮する」

「は?」

「あんたみたいな親衛隊付きと慣れ合うつもりはない」

「…俺はお前を気に入った。お前は俺に面と向かって物事を言ってきた奴だ」


意味わかんない。なにこの人。実はMかなにかなの?俺そういう趣味ないから困る。


「…俺はこの学園で平凡に暮らしたいんだ」
「…」
「それにはお前と慣れ合っちゃいけないんだ…」

こいつも中学からずっといるやつだからわかるだろう。自分がどういう立ち位置なのかを。そして、その影響力を……。
急に黙った神田を不思議に思い顔を上げると同時に眼鏡を取られた。幸い玄関なので日が入っていないので目は無事だったが、俺にとって眼鏡は体の一部だ。取られると落ち着かない。


「返せ!」

急に前髪を上げられた

「うわっ」

視界がクリアになった。昼の内に前髪を上げることは滅多にない。
目の前には神田の整った顔。目がキリっとしてていかにもやんちゃしてそうな、それでいて整った顔。男らしい顔で羨ましいよ。


「やっぱそうだ。お前…目綺麗だな…」


「…っ、」

俺の目は赤に限りなく近い茶だ。赤と言われても間違いないほど。そんな皆と違う色は忌み嫌われてもキレだなんて滅多に言われないもので、俺は思わず赤面した。


「俺と同じだ」

「あ、」

神田の瞳をちゃんと見た。綺麗な、灰色だった。








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