手に他人の体温を感じて、数秒






ふ、と我に返る


「あっ…俺」

「?」



あの皆の生徒会の一人に俺は手を出してるんじゃないだろうか

先輩の頬を触るなんて…!
うわわわ
なんてことをしてしまったんだ

誰かに見られでもしたら、俺の明日が



「っすみません、」


手を引いた

だが、それは叶わなかった


「あ、あの先輩っ…」

「………離さない…」

「え?」



なんて、言った?
どういう、意味?

どうすれば、俺の明日がある?




俺のそんな考えなんて一切知らないで先輩は言った

「色って呼んでー」



「……色、先輩…?」

「先輩いらないよ」


ちょっとすねた様に言う


あなたを名前で呼ぶということがどういうことか。
あなたは知らないわけない。



それでも、あなたがさみしそうにするから。
俺は、答える



独りはさみしいと、俺は知っているから




でも。
それでも、呼び捨てはいただけない。
それだけは、無理だ



「え、でも年上に対してそれは…」

「いいって。憂ちゃんに呼んで欲しい」

俺を見つめる瞳がやたらと優しくて、甘い
目が合うととろけてしまいそうだ。



「…、やっぱ駄目ですって」

「強情だなあ」


ちぇっと舌打ちが聞こえてきて
もしかして、この人はわかっててやっていたのかと思う



「はっ!?どっちがですか?てかいい加減離して下さいよ!」


途端に、少しだけ腹立たしくなった
騙されそうになったのか


今の先輩に悲しさは見えない



楽しそうだ。
歳相応の無邪気さ。






よかった。

小さく、そう心の中でつぶやいた









「呼んでくれないと離さないよ」

「っ!」


この人ってこんなにわがままだったの?





「わかりました。色、離して」

「…」


呼ばないと本気で離してくれなさそうだったので呼んだ
この一回きりと決めていたのでついでに敬語も外してみた

この人には使わなくてもいいだろ


「ちょっと、呼んだじゃないですか。離して下さいよ」



呼んだのにもかかわらず先輩は俺の手を離さない
所詮チキンハートの持ち主の俺は敬語に直す


「…離れたくないなあって」

「は?」

「憂ちゃん居心地がいい」




色先輩はさらに力を込めて抱きついた


「ちょっ…」

「もう少しだけ…」



甘えん坊だと思えば許せる
俺よりでがいし年上だけど…



それでも、この人は『生徒会役員』なのである



『いなかったねー』

『生徒会室行っちゃったのかも』



「っ!」

「チッ」





親衛隊だ
現実に引き戻された。

一気に危機感を感じる




「ちょっ離して下さい」


見つかったら真面目にやばい。
声を潜めながら暴れる


「うわっ暴れないでよ」



ガタッ

「っ」


『?この教室からした?』

『した。ちょっと見てみる?』



やばい!

「チッ………、ごめん憂ちゃん我慢してね」

「へっ?」



色先輩は俺を下に組み敷くと俺の眼鏡をとって俺のYシャツのボタンを高速ではずして前をはだけさせた

すごいスピード技



「え、ちょっ」

「シッ。黙って」

「あ、」


作り物の青い瞳にのまれた
おれとは違った、偽物だったけど。
それでも、俺はその瞳にのまれた


先輩は自分のYシャツもボタンを全開にしてベルトを外してチャックを若干下ろした



「えっ!何しっ、」



その行為と今の俺の置かれている状況が
もしかして、そういうことを示しているのでは



そう思った瞬間熱が顔に集まる






ガラッ

「西城様…?」

「あ、」



親衛隊の奴らが入ってきた



「…ごめんね……今取り込み中だから、また今度でいいかな?」


流し目を使って先輩はいった


「ぁ、」

「はいっ、し、失礼します」


「うん。ごめんね」



顔は見えなかったけど、親衛隊の奴らの声は裏返っていた
この人の色気は、なかなかきつい




ガラッ





『やばかったね』

『うん。』

『僕クラっときちゃったよ』

『相手の子、誰だったのかな?』

『わかんない。肌白かったね』
『うん』



話し声がどんどん遠くなり
しばらくすると完全に聞こえなくなった





「ふぅー助かったー」


…助かったのだろうか


俺は今プレイボーイと言われている人に押し倒されている状況なんだが…
これって危機的状況じゃないか?







そして、今の俺には










眼鏡がない。







先輩の手の中だ








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