「み、帝さん」

「ユウ…逢いたかった…」



いきなり抱きしめられた
びっくりした



「っ、帝さん……?」

「お前トイレ長かったんじゃねーか?」


まぁ着替えてたから長かったのは否定はできないが、それでも


「入り口で口論してたから…」

「あぁ…中で待ってたのか?」

「はい…」



あん中につっこむことはできないだろ





「あれ?髪…黒だったじゃねーか」


「あ、あのとき一日染めだったんですよ」

「そうだったのか」




ごまかしもうまくいってる感じ


だが、帝さんが抱きついたまま離れてくれない
周りの人がチラチラ見ている



「…触り心地悪くなったな……もう染めんなよ」


鬘の髪をさわって言う帝さん


「…はい」

「にしても、染めんのあんなに嫌がってたのに…なんで染めたんだ?」

「目立ちたくなかったから…」

「そうか…」


多少の茶色なら今時は染めている人はたくさんいる。でも、俺はこの眼鏡をはずすことはできないから、明るい髪はなにかちぐはぐだったから…平凡生活のためには染めなきゃならなかった。


髪の毛なら、いつか地毛に戻るだろうから…。


と、そんなこと考えていてふと周りを見渡す。



「あ、あの」

「ん?」


「そろそろ離してください…目立ってますし、」

「…」

「帝…さん?」



返事をしない帝さんを不思議に思い、見上げた



「……離したらいなくなりそうだ」

「帝さ、ん…」



切なげな声。つい、そのままあと少しは、と思ってしまったがジュンの言葉を思い出す



『長居は無用だよ』




「みか「帝。」



意を決して帰ろうと声をかけたら帝さんの後ろから声がした。
俺にはそれが誰かを確かめる方法はなかったが帝さんが彼の名を呼んだことで解決した。





「みやび、」




「ま、マサさん…?」


体を捩ってみると本当にマサさんがいた



「久しぶり、ユウ」

「お、お久しぶりです」

「帝……何してんの離れなよ」

「チッ、なんでいんだよ」


「なんだか騒がしいからね」

「…」


マサさんが黒い笑顔に対して帝さんは眉間に皺を寄せていた



「ユウ、帝から色々聞いた。携帯解約されちゃったんだって?」

「は、はい」


「今新しい携帯持ってるんでしょ?」

「いや、でも部屋において来ちゃって…」


「「…」」

「ご、ごめんなさい」





2人の無言が…痛い…




「うん。いいよ。可愛いから、許す」


「っか!?」

「てか帝、早く離しなよ」

「俺が先に見つけたんだ」

「何言ってんの。ジュンと契約してるからでしょ」



俺を無視して、口論が始まった


「なんだ、知ってたのか」

「じゃなきゃ帝がここにいるわけないじゃない」



…2人の口論を止められるはずもない。しかたない。俺は帰るとする。




「あ、あの」

「ん?」

「どうした?」

「俺そろそろ帰らなきゃ」


久しぶりに楽しかった。
2人はやっぱり好きだ。




「じゃあ送ってこうか」

「えっ」

「同室者もみたいしな」

「いや!大丈夫です!じゃっ」



俺は帝さんの腕から逃れてダッシュで逃げた





「あ。」


「行っちゃったね」

「また、逃げられた」

「…なんで逃げるんだろう…」





周りの人は近寄りがたい雰囲気になっていて近寄れない。だけど聞こえる黄色い声




そんな中、ユウの存在を疎ましく思う人は多い


ユウを非難する声も聞こえる




「…ユウを悪く言う奴は許さねえぞ」

「命がいらないようですね?丁度手袋もあるみたいですし、消えたい方は申し出てください」



それ等を許すほど、2人は優しくはなかった




「「「っ…」」」













俺はダッシュで部屋に戻った。後ろを振り返る。どうやら二人は着いてきてないようだ





―…ガチャ



「あ、帰ってきた」

「おかえり」


「た、だいま…」



あ、真哉もいる


「バレなかったぁ?」

「多分、大丈夫」

「そうか」





真哉が黒い笑顔になった



「っ、」

「で、憂ちゃんは会長と何があったのかな?もちろん、教えてくれるよね?」


「あ、いやぁ…」





怖い…怖すぎる



「俺も気になるな」

「れ、怜」




「教えて…くれるよね?」



俺の返事は決まってる




「、はい…」





こんな顔した奴らに俺が逆らえるわけない。



それから会長とエレベーターで逢ってから部屋に着いて、別れるまでを話した。





「…あいつ!」

「やってくれんねー。しかも、新聞部に撮られたとか一大事じゃんか」



「だよな…」

「お前大丈夫かよ」

「んー、なんとか頑張るよ」

「食堂は避ける?」

「…いや食堂には行く」


「でも!」


確かに、人がたくさん集まって尚且つ生徒会も来る食堂は危険かもしれない。


でも、人が多いんだ


「俺平凡だし気づかないって」





「…(会長なら気づくっしょ)」



「それに、食堂のご飯美味しいから」



俺は自炊をしようと想えば出来る

けど、やっぱり美味しいものを食べたいわけだよね



「わかった」

「でも、カラコンは外すなよ」

「えー」

「わかったか?」

「は、はい」


怜に凄まれた。こわっ
さすが不良


一人で色んな族潰してたって本当なんかな…?


噂ってどこまで本当かわからないし





それから、真哉が自分の部屋に帰った。




本当に今日は疲れた




「早く寝な。」

「うん…」

「疲れただろ?」


なんか……怜の優しさがくすぐったい。人の優しさはこんなにあったかいんだなぁ







帝さん達は俺に居場所を作ってくれた

怜達は優しさをくれた







「怜、」

「ん?」

「ありがとう」

「?あぁ…」




「じゃっ!おやすみ!」



なんだか人に感謝の言葉を述べるのは恥ずかしい…。

でも、口にすることが大事なんだ。






怜は意味がわからなさそうに部屋に入っていった


















翌日、目が覚めてすぐにいやなことを思い出した。




「………新聞…出てるのかな」




とりあえずご飯を作ろうと思い部屋を出ると怜が起きていた







「おはよ」

「早いな」

「ん、なんか目覚めたからな」

「飯くうよな?」

「あぁ。」





今日は和食にした



「和食か」

「嫌いだったか?」



不安になって見つめると


「いや、大好きだよ」


にこりと綺麗な笑顔で言われた
少し、照れる



「っ………怜って綺麗だよな」

「は?」


照れた気持ちを隠すように言った


「笑顔が綺麗」


「…、お前だって」

「あと帝さんも綺麗」


怜の顔を俺は見ていなかったから、少し照れた怜がこの言葉で眉間に皺を寄せたのを俺は知らなかった



「…」


「この学園って美形ばっかだよなー平凡ってなかなかいないぜ。俺くらいじゃないのか?」


ははは、と笑いながら言うと怜はそういや、と言った


「お前真哉の同室者に逢ったことないだろ」

「ん?あぁ。そういやないな」

「あいつは自他ともに認める平凡野郎だぜ」


「そんな奴クラスにいたか?」



俺のクラスにそんなザ☆平凡がいた記憶はない





「いや、A組だからな」

「なんで真哉と同室なんだよ」



だって真哉は俺たちと同じBクラスだろ



「真哉がB組のトップで春がA組のドベだからだろ?」


「はる…?」



かわいらしい名前。
てかA組な時点で平凡じゃないだろ…。



「まぁ、見りゃわかるって」

「そうか……?」