「お前、平凡に生活したいんだろう?」

「あぁ」


完全に平凡なんて、怜達と仲良くなった時点で諦めはついているけど…それでも、これ以上は波風立てたくないのは本当。



「だったら絶対2人に関わるな。と、いうか生徒会に関わるな」

「…わかってるよ」


俺だってこの学園で一年すごして嫌って言うほどここの掟を叩き込まれた。
生徒会というのがどれだけ大規模なものなのかわかってる。


「んで、2人に憂=ユウってのがバレちゃ駄目だ」

「…」


今まで通り、俺は帝さんたちと話せるなんて思っちゃいない。彼らに甘えられない。
藤城学園の藤堂帝である限り、それは叶わない。


「それと、これは忠告じゃないんだが…」

「ん?」

「会長と副会長、お前と連絡とってない間お前のこと探してたぞ、かなり」


「あぁ、らしい…ね……って、なんでお前がそんなこと知ってんだよ」


なんで、知ってる?だって、その件に関しては怜は他人だろ?


「これが本題。」


真剣な顔の怜に汗が背中を伝う。これから話されることは俺にとっていいことじゃないんだろう。


「実はこの学園はユウって奴がある一部の人たちにとって地雷なんだ」

「は?」


ユウって……


俺、のことだよな…?なんで?俺何もしてない…。



「生徒会長と副会長が2人がユウを探していたからだ」

「は?」

「その二人の親衛隊が、この学校の中で1,2を争う大きさなんだ」

「で?」


その位想像がつく。人気があるからこその生徒会だろうに。ただ、なんで俺が地雷になってるのか全然わからない


「親衛隊からしてみれば自分がどんなにアプローチしても今目の前にいる自分より会長達が、今ここにいないユウを必死に探してるって知ったら。自分より想われているそのユウに対して、」


「待って、……想われてるって、」

「あれ?知らなかったのか?てっきりもう言ってんのかと」

「そうゆう、こと…なのか?」

「…そうじゃないのか?今までお前がその向けられていた感情は何だった?」

「……俺、」


俺は、甘えられるのが嬉しくて。愛でられている気持ちはあったけど。でも…、俺は言われてない。好きだ、なんて言われてない。

居心地がよかった。あの二人のそばが。


「そして、」

「?」

「嫉妬に狂った親衛隊………ユウを見つけたらどうするだろうな?」

「………、殺される…」

「だろうな」

「まじかよ…」

「だから誰にもバレちゃ駄目だ」

「わかった」


傷つくのは嫌だ。嫌なんだ。


「あと、会長と会計にはあんまし近づくんじゃねーぞ」

「…え、帝さんと…会計?」

「あぁ来るもの拒まずだから本当に会計は気を付け………って、帝さんって、」


まぁ、ちょっとそこは触れるなよ。わかってるよ。会長様だよな。会長様。

と、そんなことより

「帝さんが…来るもの拒まず?」

「会計は今もだけど……会長は三年前の一時期はかなり大人しくなったんだけどな」

「大人しく?」

「そう。言い寄られても絶対ヤらなかったんだって。あの会長がさ」

『あの』って……、…いや、三年前って…もしかして、俺と


「憂に出会ってからだな」

「ま、じか…」


俺の存在が人にプラスの意味で影響を与えてたなんて…。俺は甘えるだけで、二人には迷惑しかかけていないと思っていたけど。



かなり、嬉しい


「ま、それもすぐに荒れ始めたけどな」

「…」

「すっげーイライラしてたみたいだし。ユウが、消えてからかなーり探し回ったって。俺らにユウを見つけたら知らせろと言ってきたくらいだ」

「なんで、そんなに俺のこと探してたんだろ…」

「そんだけ逢いたかったってことだろ?」


人に嫌われ続けた俺。好かれてるだなんて、信じられない。
嬉しくなってつい顔の筋肉が和らいだ。


それを見た怜は逆に顔を歪ませた


「俺だって――だよ、」



「え?なんて言った」

「…」

「なに」


少し、顔が赤い。どうしたんだろう。


「っ俺だってお前のこと好きなんだよ…忘れてねぇだろうな?」

「、」


ストレートな告白に顔が一気に熱くなった。……正直、忘れてた。

今まで好かれたことは少ない。ここまでストレートな愛情表現には未だに慣れない。


恥ずかしさを隠すためか怜は眉間にしわが寄っている。


「会長とかだけがお前を想っているんじゃない。俺だって。それに、真哉だってお前に好意持ってる。そこんとこ忘れるなよ」

「…っ…そうか…」


恥ずかしい奴だ。ほんとに……でも、なんだか…嬉しい。


「…ありがとう」

「、あぁ」


心が温かい。これが、友達ってやつなのかな。
打ち解けたかな。


いろいろありすぎて変になったかな。こいつともっと仲良くなりたいなんて思ってる俺は、きっとバカだろう。



「なに、にやけてんだよ」

「いや別にー」

「?ならいいけど明日も学校だし、寝るぞ」

「あぁ、おやすみ」

「ん」


不良なのに、授業ちゃんと受けるんだな。でも中学の時、怜を見たことがないんだけどな。

俺は知らなかった。怜が学校を憂と一緒に行くことを楽しみにしているということを。






朝、目覚めは悪くなかった。俺が朝飯を作り始めてしばらくすると怜が起きてきた。


「おはよう」

「あぁ、おはよ」

「朝飯、怜も食べるか?」

「、食う」

「わかった顔洗って着替えてきて」

「お、おぉ」



今日は朝っぽくパンでいっかな、なんて思っているとタイミング良く怜が着替えて出てきた。


「旨そうだな」

「期待は、するな。ただのパンと卵だ。」

「でも、旨そう」

「うん、でも残しても良いからな」

「残さねーよ。憂が用意してくれた飯なんだから」

「そ、そうか」


俺は怜と反対側を向いた。きっと顔が赤いだろうから…。

だいたい、不良の癖に笑顔がきれいなんて反則だ…。不良のくせに…ばか。



運が良いことに怜は飯を食ってて俺がそっぽ向いても気にしてない





静かに朝ご飯を食べていたると


バンっ!!!!!!!!!


「「え?」」


すごい勢いで扉が開いた


「ちょっとなにこれ!」

「真哉インターホンがあるだろう…てか鍵あけっぱだったか?」


「ん?新聞」


乱暴に入ってきたのは真哉だった。彼は持っていた新聞をまだ朝ご飯を食べている俺たちの前に広げた。


俺は目を見開いた……その新聞の見出しの写真は俺と、帝さんだった。



なにだこれ


「憂ちゃんがユウなんてびっくりだよ」

「な」


寧ろ俺がここまで有名になってることがびっくりだよ。新聞になるほどか。


「僕たち以外にバレてないよね?」

「多分」

「そか、バレちゃ、駄目だからね」

「…わかってる」


真哉は笑顔だった。しかし…目が、目だけが笑っていなかった


「真哉、それくらいにして行くぞ」



その恐怖から怜が救ってくれた

助かった…


「はーい」

「あ、真哉は飯食ったのか?」

「うん。食堂行ってきたよ」

「そうか。」

「でも僕も憂ちゃんのご飯食べたかったな」

「旨くないぞ」

「いーから食べたいっ」

「じゃあいつかな」

「約束だよー?」





なんで、食べたがるんだろ。誰かの手作りというのが珍しいのか??そんな大したもの作れないんだけどな…。


「おいっ!早くしろよ!遅刻したいのか!!」

「今いくー」

「なに怜怒ってんだ?」



そんなに真面目ちゃんだったのか。なんてギャップだ。
不良なんて噂があったからてっきり学校さぼりまくりーカツアゲーとか…いや。カツアゲはないか

俺、どんだけ古典的なんだ。


「本気なんだね」

「は?」


思いに耽っていたので真哉の言葉を聞き逃してしまった。

「ううん。なんでもないよ。いこう、憂ちゃん」

「あ、おぉ」



三人一緒に歩いて、思う


この人たちとならずっと一緒にいられる気がする



大切な人。と自信をもって人に言える。






平凡な生活はもう無理だけども、代わりに大きなものを手に入れた。これから辛くなることもあるだけども頑張れる気がする。



今なら叔母に感謝の言葉を言えるだろう。

この学園に来させてくれてありがとう、と。









俺に大切な人を与えてくれた。大事にしよう。



傷つくことは怖いけど。友達がいれば、乗り越えられるかもしれない。


…リンチされるかも、だけどでも、帝さん直々に教えてもらったわけだし。ある程度なら、大丈夫……うん。



「よしっ」

「?」

「どーしたの?」

「俺、頑張る」

「あ、あぁ…?」

「うん?」


俺の理解不能な気合いに真哉と怜はただただ首を傾げるばかりだった


俺、お前といるために。
頑張るから。











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