2限目終了。この時間が一番空腹との戦いだ。つまりは早弁が最も盛んに起こる時間帯な訳だが、今日金ねーから出来たら早弁は避けたいんだよな…。誰か喰い物持ってねーかな。

「ねーねージャッカル」
「どうかしたか?」

そんなことをぼんやり考えていたら目の前に名前の姿。こいつとは今年初めて同じクラスになったけど、気づいたら懐かれちまってた。別に悪い気はしねーけど、なんていうか、こいつブン太みたいでなんか憎めないっていうか。俺ってやっぱこういうタイプに弱いのかな…。

「ケーキ焼いてきたの!食べて〜」

手に持っていたタッパーをじゃーんと言って開ける名前。中をのぞくとそこには薄青の紙ナフキンの上に店に売ってそうなきれいなチーズケーキがいくつか並んでいた。空腹もあってか、すっげえ美味そうに見える。

「うお、まじかよ!さすが名前。にしてもお前相変わらず上手いよなこういうの。」
「えっへへー私晩ごはんは週3で担当してますから!」
「…あれお前ん家って母さんいなかったっけ?」
「いるよー。しかし母は史上最強に料理が下手なので私が作ってます。」
「はは、すげぇなそれ。でも、来週テストじゃねーか。いいのか、そんなんで?」

テストのためテニス部すら今は休みがでてる。しかも今回は範囲がどの科目も普段より多いから、みんなひーひー言って勉強してるはずなのに。

「うーん、あんまり、よくない…。」
「…ケーキ焼いてる暇じゃないな。」

目をそらして若干俯いた名前は頭を大きく縦に振った。全く、楽しみはテスト後にとっておけっての。

「うん。というわけだから今日の放課後私に勉強教えてねジャッカル!」
「はあああああ!?ちょっと待て、俺だって勉強ヤバいんだから人のことまでは」
「ケーキ、食べたよね?」
「え、ちょ、まさか…」

やっぱりこのパターンなんだな、俺って…。





「というわけで、これは現在完了の継続。わかったか?」
「ぜんっぜん。」
「っておい!…はあ、これできないと今回相当やばいぞ。」
「だって小難しくてよくわかんないんだもん。先生何言ってるか全然分かんなかったし。」
「まああの先生の教え方もちょっとな…。かくいう俺も柳にいくつか教えてもらったし。」
「…あ、そうだジャッカル、授業やってよ。黒板使ってさ!」
「ちょっと待てよ、それかなりの無茶振りだろ!」
「大丈夫だいじょーぶ!」

そう言って名前に背中をぐいぐい押され、仕方なく俺は柳に教えてもらった様に黒板に時系列の図を描き始めた。うん、やっぱこれが一番わかりやすいんだよな。

「こんな感じに英語は時制があって…って」
「ん?どうかした?」

名前に視線を戻すと黒縁のメガネをかけた名前とばっちり目があった。心臓がどくんと跳ね上がる。いや、どうかしてないけど、どうかしてるよな、俺。

「メガネ、かけてたっけ?」
「ああ、これね!初めて使うんだー。どう?」

正体のよくわからない緊張を隠してとりあえず尋ねてみた。なるほどな、そりゃ初めてみる…いやちょっと待て、ということは俺が名前のメガネ姿を初めて見たっていうのは考え過ぎか?考えすぎだろ、俺。


「ああ、そういうことか。…うん。」
「?変なジャッカルー。」

否定はできない。俺いま明らかに動揺してるよな。だって普段茶目っ気たっぷりの名前が真剣に俺を見つめてて、しかもメガネ似合ってるし、雰囲気全然違うし、ああもうどうすればいいんだよ、俺。

「…似合ってる、すっごく。」
「おっ!…へへっ、惚れ直した?」

そのあと俺があいつと1回も目を合わせることができなかったのはいうまでもないだろう。

(メガネ×ジャッカル)



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -