5.見た目と中身は比例しません。


どうやらゼロは◯◯ちゃんに本気で惚れているらしい。
玉砕事件(笑)から1週間、来る日も来る日も本を読み続けては知識を増やしていくゼロのやる気には畏れ入る。

『お前今何読んでんの…。』
「日本の本は大体読んだから今は海外のものを読んでる。」

厳選した50冊はあっという間に読み終えたらしい。
元々速読が得意だったようだけど、そのペースは日に日に上がっていってる気がする。
しかもその合間に学校の予習復習試験勉強までやってるだなんて、俺の幼馴染はバケモノか何かなのか。

『お前あと何冊読む気なんだよ。』
「さぁ?一先ず彼女との会話に追いつけるようになるまでだな。」

マグカップを片手にひたすら本を読み耽るゼロは本当に見た目も相まって絵になるが、中身は好きな子と会話をしたいだけという本能に忠実な所が本当に笑えるんだけどな。

「それより…なにか新しい情報はないのか?」
『んあ?あー、はいはい。』

本を見ながら俺の話も聞くつもりらしい。
それで内容が頭に入ってるんだから本当こいつバケモンだな。

『◯◯ちゃんは最近闇の男爵シリーズにハマってるらしいぜ。先行発売された洋書版を買ったんだと。』
「闇の男爵…工藤優作の作品だな。ミステリーが好きなんだろうか…。」

読んでいた本に栞を挟んで部屋の隅に積み上げてある本の中から1冊を取り出す。

『これも借りてたのかよ。』
「いや、これは◯◯さんが…。」

オススメしてくれたから、と。
大量の本を借りていくゼロの姿を見て、本が好きになったのかと事務員伝てに教えてくれたらしい。
なんだお前、俺の知らないところでちょっと進展してんじゃないか。

『じゃあこれ読んで直接感想言いにいきゃいいんじゃね?』
「はっ!?いや、それは…。」

もごもごと反論するゼロの顔は褐色の肌にも関わらず分かるほど赤く。
なんつーか、こいつ見た目の割に純粋というか奥手だよな。
見た目完全ヤリチンチャラ男みたいな顔してんのに。

「もう少し知識を増やしてから、だな。」
『そういってもう1週間経ってるけどな…。』
「う、うるさい!」

でもまぁ、ゼロが人並みに誰かに興味を持つだなんて想像もしていなかったわけで。
そんなゼロが興味を持つどころか恋に落ちちゃったんだ。
幼馴染として応援しないわけにはいくまい。

『ま、他に何か分かったら教えるから。』
「…すまん、ありがたい。」

努力を重ねるゼロがいつか報われる日がくるように陰ながら応援しようじゃねぇの。






(あ、ちなみに◯◯ちゃん、本のお供には必ず紅茶を淹れるんだと。)
(紅茶か…美味しい淹れ方もマスターしなきゃな…。)



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