4.ライバルは無機物
俺が公開告白し玉砕した事は瞬く間に学校中に広がった。
あれだけ人が居ればそうなるだろうなとは思ったが、口々に噂されるのは正直気分が良くない。
しかも何故かアレを機に俺に話しかけてくる男が増えた。
光曰く"降谷零も普通の男だった"ということで俺への好感度が上がったとか。
ふざけんな、俺はヤローの好感度より彼女の好感度が欲しい。
「つーか自分からアプローチかけたことがないゼロには無理なんじゃね?」
『くっ、うるさいぞ光!』
光の言葉が俺の胸にグッサリと刺さる。
しかし反論できないのが痛いところだ。
図星で悪いか。
「しかも相手は知紗ちゃんだろ?余計難しいわ。」
『…だよなぁ。』
ひとまず敵前偵察…とはちょっと違うけれどアプローチをかける為に彼女の事を色々と調べさせてもらった。
その結果分かったのが…。
「本が好きだから司書になったんだとは思ってたが、まさかビブリオフィリアの域だとはなぁ…。」
《ビブリオフィリア》
本に対する愛を発露する人のこと。愛書家。書物崇拝狂などと呼ばれたりもする。
読書家が「本を読む」行為が好きな者を指すなら愛書家は「本そのもの」が好きな者をいう。
もはやそれは性癖と称されるほど。
『文字通り本の虫、どころかそれ以上だなんて…。』
愛書家と言われる彼女は本の為に生き本の為に働いている。
幼少期からそのけがあったらしく物心ついた時から膨大な量の書物を読みその知識を脳に納めた。
もともと記憶力が優れているのだろう、まさに歩くウィキペディアである。
「本が恋人なんて、こりゃどんな女の子より厄介だぞ。」
『それがどうした。』
彼女が本に惹かれたのは自分の知らない世界や思考・思想に憧れを持ったかららしい。
それなら俺がそれになり変わればいい。
記憶力には自信があるし、知識量だってこれからまだまだ増えていく。
話すのが好きだから話術だってそれなりにあるだろうし、相手が無機物で勝ち目がないから諦めるだなんて俺の中にそんな選択肢は存在しない。
『やってやろうじゃないか。俺は諦めるのが大嫌いなんだ。』
「出た!ゼロの負けず嫌い!」
何より、本気で好きになったんだ。
振り向かせる努力もしないで目の前から消えられたらたまったもんじゃない。
あの頃の…先生がいなくなった俺とは違う。
「そうと決まれば作戦立てなきゃな〜。」
『彼女の情報はお前にかかってるんだ。頼むぞ。』
「他ならぬゼロの頼みだからな。任せとけ。」
ガシッと肩を組みニヤリと笑いあう。
覚悟してろよ、西園寺知紗…!!!!
(……で、ゼロお前何やってんの?)
(とりあえず本の話についていけなきゃ話にならないからな。)
(まさかとは思ったけど…これ全部読むのか!?これを!!?おま、何冊あるんだよ!!!)
(軽く50冊、これでも大分少なくしたんだ。)
(……お前、ちょっと頑張る方向おかしいぞ。)