3.見事玉砕、なんて笑えない
20歳にもなって一目惚れとは。
一目惚れがダメなわけではなく、これが20歳にもなって二度目の恋という所が問題なのか。
なんにせよあれ以来気まずくて図書館に行けず課題が溜まる一方だ。
「ちくしょう……。」
この恋心を唯一知る光は面白がって資料を借りてきてくれないし、流石にそろそろ提出期限が迫っているから行くしかない。
それにアレだ、構内の図書館は広く司書も多いしあの人にピンポイントで会うとは限らない。
行ったって大丈夫だろう。
『…あら、きみこの前の。』
………と思っていた数分前の俺をぶん殴りたい。
「あ…この前は友人が、その、えっと、すみませんでした…。」
図書館に入って受付にあの人がいないか確認し、いなかったから安心して本を持って受付に行ったらなぜかいた。
しかも前回の事で顔を覚えられていたらしい。
真っ正面から視線を受けて恥ずかしいやら何やらで顔に熱が集まっていくのがわかる。
『翠川君のお友達ですね。随分と大きな声を出してたけど、今後は気をつけてね。』
きっと目の前の彼女もそれに気付いてはいるものの、羞恥からくるそれと勘違いしてくれたのか何事もなかったかのように接してくれるのが幸いか。
いやそれより翠川君??なんだあいつ彼女に名前を知ってもらってるのか。
くそ、こういう時あいつの社交性はムカつくが羨ましい。
『はい、手続きは完了しました。返却日は今日から1週間です。忘れないように気をつけて下さい。』
すっと本を差し出されるも、受け取らない俺を怪しんだのか彼女の視線が上がった。
視線が、交わってーーー。
「俺、降谷零って言います!!俺と付き合って下さい!!!」
ハッと気付いた時にはもう遅い。
本能のまま彼女の手を掴んで半ば叫ぶように口をついた言葉に、周囲が騒めく。
そんな突き刺さる好奇の目線を諸共せず、彼女は1つ瞬きをした。
『ここは図書館です。本ではなく女性をお探しならなら他所へどうぞ。』
この見た目だ、自信が無かった訳ではない。
なのにまるで子供の戯れと言わんばかりのあしらいに肩を落とした俺は、悪くない。
降谷零(20)、初めての告白は玉砕でした。
(おいおいゼロ。お前が図書館で知紗ちゃんに公開告白したって噂になってるぞ。)
(………黙れ光、お前のせいだ……。)
(え、その様子だとマジなのかよ…。……玉砕したってのも?)
(うるさい。………俺は諦めてないからな。)
(えぇえええ……。)