1.恋愛は必要ない


昔から持て囃されるのには慣れていた。
この顔だ、寄ってくる女は星の数ほどいる。
勿論見た目だけではなく、勉強もでき趣味でボクシングやテニスをしているおかげで身体つきだって他の男に比べれば段違いだろう。
そしてそれは大学生になった今、最盛時に入ろうとしていた。

「降谷くん…、私降谷くんが好きなの…私じゃダメかな…?」

もはや日常の一部と化していた告白。
しかし学食という場所柄か囃し立てる周囲に、目の前に顔を赤くしながら…しかし自信げにこちらを見上げてくる女。
どうやら今年のミスコンの優勝者で、入学してからミスコン三連覇を果たしているらしい。
なるほど、はたから見ても綺麗な顔立ちをしているしスタイルも良い。
きっとそこら辺の男ならコロッと落ちるのであろう計算されたその仕草も、俺の前では無意味だった。

「悪いけど…俺年上が好きなんだ。」

ごめんな、と俺が出来る最大限の配慮をして踵を返す。
まさかフラれるとは思っていなかったのか女の顔がひきつったが気にもとめずその場を去る。
先程とは違った意味でざわつく食堂と女の泣き声にはぁ、とため息をついた。


そしてその日から噂話が広がるのだ。


『また降谷が女をフったらしい。』

『降谷は年上が好きなんだろ?年増好き?』

『ミスコン覇者すらもこっぴどくフった。』

『ホントは男が好きなんじゃないか?』


まったく。日本随一と言っていい大学なのに、この年頃の男女は揃いも揃って色めき立つのに忙しいらしい。
平和なんだと喜べばいいのか、平和ボケだと憂えばいいのか。
しかし俺には関係ない。
目標のためにただひたすら精進するのだ。



降谷零(20)、今日も今日とて勉学に勤しんでいます。



(おい!ゼロ!お前沙羅ちゃんフったのかよ!)
(お前もかよ…、ってか沙羅ちゃんって誰だ。)
(ミスコン三連覇した子だよ!つか名前知らなかったのか?!)
(あぁ、あの子か…知らん。興味がない。)
(お前…本当に男か…??)



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