He knowS

2.何も知らない甥と

ごろちゃん…毛利小五郎は私の姉の同級生で、6歳も歳の離れた私ともよく遊んでくれた兄のような人だった。
姉や、ごろちゃんが英里ちゃんと結婚し甥とその幼馴染である蘭ちゃんが生まれて。
ずっと、ずっと一緒に暮らしてきたのだ。

『私も舐められたものね。』

目の前で萎縮する坊やの頭を掴みギリギリとあらん限りの力を入れる。
痛い、いたいと喚くその姿は間違いなく私の甥のものだった。

「いた、いたいっ、ちょ、マジいった!」
『新ちゃんごときが私を欺こうだなんて100年早いのよ。』
「ちょ、悪かったって!!」

手の力を抜けばグシャグシャになった髪を整えじっとりと見上げてくる瞳をこちらも冷めた目で見返せば、甥は口元をひくりと引きつらせた。

「くっそ…。」
『義兄さんならいざ知らず、姉さんが私に嘘をつけない事くらい新ちゃんもよく知ってるでしょう。それに私はあなたのオムツを替えお風呂にも入れてきたのよ。分からないわけないわ。』

たった1年、たった1年離れていただけで甥やごろちゃん達の身の回りはとんでもなく変わっていた。
黒の組織だかなんだか知らないけれど、きっといつものように興味本位で首を突っ込みしっぺ返しを食らったんだろう。
姉譲りの美貌と義兄譲りの頭脳を持ちあわせた甥は、自分の力を過信しすぎる節がある。

『挙げ句の果てにごろちゃんとこにお世話になってるんですって?眠りの小五郎も新ちゃんのせいでしょ。いつかバレるわよ。』
「わーってるよ。つってもおっちゃん鈍いから気づかれねぇし大丈夫だって。」

へっと鼻で笑った新ちゃんに拳骨を落とす。
ごろちゃんが鈍い?
本当、新ちゃんは何もわかってない。

『アンタが自分の推理力を過信しすぎるせいでごろちゃんがどれだけ苦労してるか、いつになったらわかるのかしらね。』

脳内に疑問符を浮かべる新ちゃんの頭を二、三度目撫で、また遊びに来るわと家を出る。
さて、あともう一人。
ごろちゃんが新ちゃん…もといコナン並みに気にかけてる馬鹿弟子にはもう少しストレートに言っても良いのかもしれない。
いい大人がこんな事に首を突っ込むなんて人の事言えないと、私の口から乾いた笑いが溢れた。


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