家に帰るやいなやおばさんから娘が帰ってこないの!どうしようマルコ君!?と泣き付かれる午前0時ちょっと過ぎ。
俺は娘はちゃんと探してきますからと言っておばさんを宥め家に帰ってもらう。


自分の部屋へ向かう階段を上りながらはああと深いため息を吐く。
バイトで疲れていてすぐにでも眠りたいが、明日提出の全く手をつけていないレポートも何とかしなければならない。
というのに幼馴染のせいでまた仕事が増えてしまった。
昔から馬鹿な幼馴染の世話を焼くのが俺の役目なので仕方ないことなのだが。
部屋の窓を開けて屋根の上に上る。
案の定俺の幼馴染はそこにいた。


「マルコ何してるの?」
「こっちの台詞だよい。この前屋根から落ちて大怪我したばっかりだろうが。」
「もう治ったもん。それに高いところが好きなの。」
「知ってるよい。」
「私今日彼氏できたの!」
「それも知ってるよい。」
「何で!?」
「お前がわざわざ授業中に電話かけてきたんだろうが。」

俺がそう言えばわははと笑う幼馴染。
相変わらず体育座りをしたままで動こうとしない。
レポートや眠気のことを言う隙を俺に与えないでキラキラした顔で俺に昨日あった楽しい出来事を話す幼馴染。
俺はとりあえずこいつの隣に腰を下ろす。


「でもねその人は私の王子様じゃないと思ったのよ。」
「何でだよい?」
「だっていきなりキスしてきたのよ!それも綺麗じゃないやつ!すっごい汚いの!」
「そんなもんだろよいカップルなんて。」
「ぶん殴ってやったわ。」
「お前は…。」


またわははと笑うこいつを見て呆れたと同時に少し安心した。
こいつは昔から馬鹿みたいに白馬の王子様がいると信じている。
大学生になってからも馬に乗ってないのは許すけど王子様は絶対私を迎えに来るの!と言って聞かない。
こいつより小学生のほうがよっぽど言いたいことやしたいことを我慢していて大人な気がする。
こいつにとっての恋愛は上辺だけの綺麗なものしか見たくないんだろう。


「マルコは何かあった?大学生にもなったことだしね。」
「何も無いよい。」
「つまらないねマルコは。」
「うるせえよい。」
「私の友達がマルコ君かっこいいって言ってたよ。高校の時から何気にもてるよね。」
「今はいらないよい。」
「昔からそれしか言わないじゃない。」


そう言えばまたわははと笑って立ち上がり屋根の上にもかかわらずくるくると回り始める。
とても楽しそうだ。
そういやこいつは昔バレエを習っていたんだっけ。


「落ちるよい。」
「落ちないよ。」


幼馴染のはいているミニスカートがふわっと広がる。
中が丸見えだ。
高校生の時もこいつは場所や状況を弁えず制服のスカートのまま大股開いて座ったり走ったりするもんだから、俺は人目に晒されない様によく隠したなあと思い出す。
注意しても昔から聞かないのもそうだ。


俺も幼馴染も大学生になった。
しかし小さいころから何も変わってない。
このまま大人になっていくのだろうか。
きっと幼馴染は俺以外の男と付き合うだろう。
俺は仕方ないと思って他の女と付き合う。
お互い結婚して生活環境が変われば今までの出来事が笑い話に変わるのだろうか。


「私の王子様が見つかるまでマルコが私を守ってね。」
「分かってるよい。」


とりあえず俺は屋根の上から落ちてもらっては困るので幼馴染が回るのを止めようと思う。
俺はまたはああ、とため息を吐く。
いつも通り幼馴染の王子様が見つかるまで世話を焼きたいと思う。











0614
意識の欠如







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