怒涛の新学期から早一ヶ月が経ちまわりのみんなは受験だ受験だと騒いでいる。
まだ五月だと思っていたのにどうやらみんな進路をちゃんと決めているらしかった。
毎日のように遊んでいたウソップも芸大を受けるからとセンターの勉強を始めたりと美術予備校にも通い始めた。
ナミは難関の気象予報士の資格をとるべくかなりいい大学を受けるらしい。
ルフィは勉強は出来ないが運動はできるうえ部活でもかなり高評価を得ているため推薦で今年中には決まるだろうとのことだった。
クラスの中でそんな話が飛び交う中私はと言えばまるで何も考えていない。
進路調査書にはとりあえず入れそうな大学を適当に書いた。
やはり進学校なので有名大学志望の子が多いが、目標があって専門学校に行く子もいる。
親の仕事を継ぐから就職希望の子もいる。
皆何かしら将来のことを考えてそれに向かって一生懸命だというのに私は…と思うとため息が出る。
今こうして自習の時間に大学のパンフレットを見るという時間が苦痛で仕方ない。
このままずっと高校生でいられたらいいのに。


「名前屋、これ見ろよ。」
声のする方を見れば隣の席のトラファルガー君だ。
彼は見るからに変人だが喋っても変人だった。
そんな彼と隣の席というだけでなぜか仲良くなってしまったのだった。

見ろと言われトラファルガー君の指差す先を見れば顔中落書きを施されたキッド君が寝ている。

「ちょっ、また怒られるよ。」
「怒るのを見るのがおもしろいからやるのが分からねえのか?」
クッと笑いを堪えている。
トラファルガー君は毎日の様にユースタス君にちょっかいを出しては喧嘩をしている。
最初は度肝を抜かれたが最近ではもう慣れてしまった。

「そろそろ起こすか。」
「…。」
「ぶくぶくぶくぶく。」

トラファルガー君はユースタス君の耳元で呪文の様にそれを呟く。
ユースタス君は水が怖いのでこれを唱えるとすぐ起きるらしかった。

ハッ、と目を覚ましたユースタス君の顔の下にはあらかじめ用意されている鏡がある。
ユースタス君がそれを見ればたちまち騒がしくなるのだった。


「てめえええええええええ!!!!」
「自習中にに寝るなんてよくないぞユースタス屋。」
「きもい黙れ死ね。」
「ふっ、」

こんな会話がぎゃあぎゃあと繰り広げられるわけだ。


「お前ら静かにしろよー。」
眠そうな顔でシャンクスがこちらにやって来る。
さっきまで寝ていたらしく口によだれがついていた。
シャンクスに注意をうけたにも関わらず相変わらず二人はぎゃあぎゃあと言い合いをしている。


「寝てたでしょシャンクス。」
「当たり前だろ自習なんだから。」

何でこの人教員免許取れたんだろう。


「おまえ進路どうすんの?」
「この前出した通りですよ。」
「お前が女子大ってキャラかよ。」

ニヤニヤと笑うシャンクス。
本当にこいつは…。

「したいことあるって言ってただろ?」
「もう諦めた。」
「お前なあ。その年で諦めるってことがどれほど勿体無いことか分かるか?」
「諦めも肝心って言うよ。」
「大きくなったら嫌でもいろんなこと諦めなくちゃいけないのに、そんな早くから諦めてたらつまらないぞ〜。」
「…。」
「まあお前の人生だ。お前がよーく考えて出した答えがこれなら俺は別に何も言わない。」

じゃああと10分寝るから、と言って教卓へ戻っていくシャンクス。
私は何も言い返せなくて目の前にある大学のパンフレットが霞む。
こんなときマルコ先生もシャンクスと同じようなことを言うのかな。
私はマルコ先生にいろいろ相談したいことがあるのにそれはもう叶わないのかな。














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