教室の扉を開けると黒板消しが落ちてくる。
席に着けば机の元の色が分からなくなるほど落書きされている。
授業中は後ろからごみをぶつけられる。
弁当を食べようと思ったら食べられている。
掃除中ごみ捨てに行こうと歩いていたら水を上から勢い良くかけられる。


毎日の様に繰り返されるこの行為に何の意味があるのかと本人に問うのも馬鹿らしい。
きっと意味などないのだろうが。
女子トイレでひっそりと本を読みながらそんなことを思う。
今読んでいる本の主人公は私とかけ離れている。
誰からも好かれ明るい活発な主人公だ。
いい面しか書かれていないがきっとこの主人公もあの男のように腹の中ではドス黒いものが渦巻いているに違いないのだ。



そろそろ授業が始まってしまうから行かなくてはいけない。
トイレの花子さんに代わりに授業に出てほしいなんて下らないことを考える。
トイレがこんな居心地のいい場所だとは思ってもいなかった。
私を構う人もいなければ、何か仕掛けてくるやつ等もいない。
そのうえとても静かで過ごしやすい。
いじめっ子に感謝できるとしたらこのトイレとの出会いくらいなものだ。
女子トイレから出るといつも何人かでつるんで私を苛めるグループのリーダーの男が一人で立っていた。
さすがに女子トイレには入れないのだろう。
恥ずかしそうに立っていた。



「泣いてたのか?」
「泣いてません。」
「お前これだけされてるのにつらくないのか?」
「そう思うならやめてください。」


私はそう言ってスタスタと教室に向かう。
つらくないわけがない。
制服が汚れるのも嫌だしお昼が食べれないのも嫌だ。
冬に制服が水浸しになるのはとても寒いだろうし。


「待て!」
「…何ですか?」
「お前いつも一人でいるだろう、だから…」
「だから苛めるんですか。」


男は私の腕を掴む。
自分を正当化でもしたいのだろうか。
全く理解ができない。
私がそう言えば困った顔をしてきょろきょろと目を泳がす。


「何でわざわざ自分から一人になるんだよ。」
「別にあなたには関係ない事だと思いますが。」
「関係なくねえ!」
「…。」
「お前は誰か頼れるやつを見つけたほうがいい。例えば、俺とか。」


そう言ってもじもじとするポートガス。
私は下らなく不可解な行動しかとらないこの男を到底頼れそうにない。


「泣きたいときに泣けないやつは苦労するんだぞ。」


そう言って私の腕をがっしりと掴むポートガス。
私を見る彼の目はとてもまっすぐだ。
私を泣かせたいのだろうがこんな事をするのはやめてほしい。
彼が善人だろうが悪人だろうが関係ない。
ただ関わらないでいてくれたらいいのだ。
キンコーンと授業開始の合図とともに私はそう思うのだった。










0610
協調性の欠如

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