海列車は恐ろしいほど静かだ。
パウリーのあの時の顔が頭から離れない。
ずっと騙してたのかよ、とボロボロと泣くパウリー。
私は一言も喋れなかった。
あんな顔見たくなかった。
初めて殺したくないと思えたのに、まさかこんな形で離れることになるとは。
「あーあーあーあー。」
「黙れ。」
「ルッチの馬鹿。」
「…貴様殺されたいのか。」
「お好きにどうぞ。」
「止すんじゃ。こんな時にまで喧嘩なんて。」
「ルッチがパウリー殺した。」
「…まだ言ってるのか。あんな男のことを。」
「私の恋人よ。」
「元だろう。」
「ええそうよ。」
「お前だって見殺しにしただろうが。」
そんな事分かってるわよ!と言おうとしたのに涙が出てきて声が出ない。
ブルーノは完全に関わりたくないのだろう。窓の外を眺めている。
カリファはただ黙って私を見つめている。
「お前は諜報員失格じゃな。」
いつもは優しいカクに蔑んだ目で見られる。
ルッチは何も言わない。
私の黒い服は涙でもっと黒が濃くなる。
「これで最後にするんじゃろう。」
「…。」
「だったら一生パウリーのこと忘れんと生きていけばいい。」
「…そんなの、」
「お前はCP9なんじゃ。ほかの奴らとは違う。」
「…。」
「わしらは人に依存せんでも生きていける。」
そう言うカクを見ていると何故だかいっそう涙が出た。
希望なんて持たなければいい、とあの日カリファに言われた意味が今になって何となく分かった気がする。
「もう振りむくな。」
カクのその一言が私にドスンと鉛の様にのしかかるのだった。