「ねえ、別れよう。」
「はあ?」
私がそう言えばパウリーは別段驚いた様子も無く、仕事に行く支度をしている。
「何でだよ。」
「他に好きな人できたの。」
「馬鹿言ってるんじゃねえよ。」
服を着ながら大きなあくびをすしてベッドから出るパウリー。
私の言ってることを全く本気にしてないようである。
「本当よ。」
「何怒ってるんだよ?俺何かしたか?」
「怒ってない。別れようって言ってるの。」
「あのなあ、」
パウリーもイライラしてきたのか、荒っぽくパンをトースターにいれる。
「そんな単純な理由でお前が別れるなんて言うわけないだろうが。」
「単純じゃない、複雑な問題なのよ。」
「お前も早く用意しろよ。」
「私ルッチと浮気してるのよ。」
「はあ!?それを信じられると思うか俺が!お前らがどれだけお互いのこと嫌い合ってるか知ってるんだぞ。」
さすがにルッチを理由に使ったのは我ながら馬鹿だった。
ルッチと浮気なんて不名誉すぎる。
「えーっと、じゃあカクのことが…。」
「お前がカクを激愛してるのも知ってるよ。」
カクも駄目か。
カクはかわいくて優しいから大好きなの!とよくパウリーに話していたっけ。
パウリーは最初の方よくそのことを話すたびに妬いていたなあ。
かわいかった。
「じゃあ理由なんてないから別れてください。」
「意味分んねえよ!」
お前も服着てベッドから出ろ!パン焼けたぞ!とぎゃあぎゃあ言われる。
むくり、と出れば破廉恥!!と言って顔を赤らめて背ける。
一体どれだけ見てきたのよ、とツッコミたくなったが服を着る。
「もう来ないからね。」
「ハイハイ。」
「別れたんだよ私たち。」
「まだ言うか。」
席に着けばパウリーはパンにジャムを塗って私に渡してくる。
「また不安になったのか?」
「違う。」
「俺はお前を愛してる。」
「…恥ずかしい人、全く。」
「うるせえ!お前が言わせたんじゃねえか!!」
顔を相変わらず赤くして喚くパウリー。
パウリーは私がどれだけパウリーのことが好きか知ってる。
私もパウリーが私のことどれだけ好きか知ってる。
パウリーはいつだって欲しい言葉をくれるのに。
私とパウリーはさよならしなくちゃいけないのよ。