私はと言えば左手に包帯を巻いているパウリーの部屋にいる。
入るなり女が男の部屋に入るなんて破廉恥だぞ!!!とドアを閉められそうになったが、何とか説得して入れてもらえた。
「私決めたの。」
「何をだ?」
「パウリーの腕が完治するまで私がパウリーの腕になる!」
「はあ!?」
私がそう言えばあからさまに困った顔をするパウリー。
すごくかわいい。
「家事もやるし、仕事も私じゃ不十分かもしれないけど精一杯やらせてもらうわ。」
「そんなの別にいいから帰れよ。」
「駄目よ!私借りを借りたら返さないと気が済まない性質なの!」
「何だよそれ!?別にいい。」
パウリーは女を部屋に入れたことがないのか、若干挙動不審だ。
私はパウリーの話などに耳を貸さず、早速エプロンを着け料理を作る。
まるでパウリーの嫁みたいだな、と思うと自然に笑みが零れた。
パウリーは後ろで文句や何やら言っていたが料理が出来ると嬉しそうに寄ってきた。
まるで犬だな。
「うまい!」
そう言い、嬉しそうなパウリーを見ていると、何だかうずうずしてくる。
米粒だらけの口の周りを拭いてやると、恥ずかしそうにちょ、やめろよ!と言う。
顔を真っ赤にして自分の服でごしごしと拭く。
何だこの生き物はと思った。
「片手じゃ食べずらいでしょ?私が…」
「ぎゃああああ!」
奇声を発して隅っこに逃げるパウリー。
少し傷ついた。
けれどシャイだから仕方ないと自分に言い聞かせる。
とりあえず溜まっているみたいだから洗濯でもしてあげよう。
洗面所へ行く。
「何してるんだよ!?」
「洗濯。」
「もう本当にいいから、かえ、あ…」
私はあまりにもシャイなパウリーにイライラしてきたので泣き落とすことにした。
私の涙を見るなりあたふたし出すパウリー。
「うっ、うっ、私ね命の恩人のパウリーの恩返ししたくて…でも迷惑だよね、ごめんね。」
「いや、べ、別に迷惑なんかじゃねえよ。」
「ほんと?じゃあパウリーのお手伝いさせてくれる?」
涙目、上目遣いでパウリーを見上げれば、うっ、と顔を真っ赤にし分かったと言うパウリー。
計画通り。
とりあえず洗濯をし、汚く男くさい部屋をざっと片付ける。
「よし!次はお風呂ね!」
「風呂掃除なら昨日したぞ。」
「違うわよ。さっさっと服脱いで。」
破廉恥!破廉恥!とうるさく喚く。
照れているのかしら。
「片手じゃ綺麗に洗えないでしょ!」
「なっ馬鹿女!洗えるからやめろ!俺に近づくな!!」
相変わらず顔を赤くしてきゃあきゃあ言うパウリー。
こんな男初めて見た。
これがルッチだったら余裕で殺害動機になるが、パウリーならかっこよくて何だかかわいいから許せる。
「ソープ嬢とする様なこと想像してるんなら、全く違うわよ。」
「なっ、そんなの行ったことねえから分かんねえよ。」
「じゃあいいじゃない。」
「良くない!!」
余りにも嫌がるものだからさすがの私も断念した。
包帯を外しビニールを巻いてあげることしか出来なかった。
その間もきょろきょろと挙動不審なパウリーにドキドキしてしまった。
パウリーは風呂から上がり、なるべく私のほうを見ないで冷蔵庫のビールを飲む。
「いつ帰るんだよ。」
「何が?」
「もう遅いぜ。何なら送ってやってもいいけど。」
「何言ってるの。」
「?」
「腕が治るまで私パウリーと生活を共にするって決めてるのよ。」
「いつ決めたんだよ。」
「だからしばらくここに置いてもらうから。」
「なっ、」
「夜だって男の人は大変でしょう。だから私が…、」
私がそう言えば赤いのか青いのか分からない顔をしていた。
とりあえずパウリーににじり寄る。
「私がいろいろお手伝いしてあげる。」
そう耳元で囁けば体をビクッと震わせるパウリー。
それを見ると何だか興奮してきた。