「言い忘れていたが今日から任務だ。」
「ああ、そうなの、いつまで?」
「五年間だ。」
「帰ってくるんでしょ何回かは。」
「無理だろうな。潜入捜査だから。」
「はあ!?」


朝、私が起きるとルッチはもうきっちりいつもの格好をして優雅に新聞を読みながらコーヒーを飲んでいた。
そしていきなり五年間も潜入捜査があると聞かされる。

「聞いてないけど。」
「言ってないからな。」

新聞に目を通しながら相変わらずな調子でそう答える。
意味が分からない。
もしかしたら嘘をついてるのかもしれない、と一瞬思ったが、ルッチの性格上考えられない。


「何で黙ってたのよ。」
「忘れてたんだ。」
「普通そんなこと忘れる!?」
「うるさい。」

私はそう言われ腹が立ってきたのと同時にすごく悲しくなってくる。
一応ルッチの彼女だと思っていたのに、所詮ルッチにとってはセフレ程度だったのだろうか。
五年も離れているなんてそれはもう恋人同士にとってはものすごく試練だ。
ルッチが私を好きならもっと前もって言ってくれてもいいはずだ。
そしてルッチが任務までの期間いつも以上に優しくしてくれれば私たちの愛はもっと育ったはずだ。


「お前はいつまでも馬鹿なことを言ってないで用意をしろ。」
「え!まさか私も…。」
「寝ぼけてるのか。」


そう言って椅子から立ち上がりこちらへやって来て、私の髪を勢い良く引っ張るルッチ。
「ちょ、い、痛い!!!」
「痛くないと目が覚めないだろうが。」
「覚めてるよ!」
「フン。」

鼻で笑うルッチは私が寝てるというのに私の上に平気で座る。
今日から五年も離れる恋人がする行為だとは思えない。


「悲しいか?」
「別に悲しくなんかないわ。ルッチは意地悪だから離れてるほうが楽かもね!」
「そうか。」
「重い!!!!」

ルッチはさっきよりさらに体重をかけてくる。
正直私とルッチの関係はかなりあやふやで、付き合っているのかもよく分からない。
なんとなくいつも一緒にいるし、キスもしてるしセックスもしたというだけの関係だ。
好きとか付き合おうとか言われたことも無いし。
でも私はルッチを好きだし、ルッチも少しくらいは私のこと好きなはずだから恋人だと私は思っていた。
こうしてルッチがしてくる意地悪だって私だけの特別なものだと思ってた。
ルッチは悲しくないのかしら。
ルッチは平気なのかしら。


「本当にそう思うか。」
「何が?」
「離れてるほうが楽か。」
「ルッチはずるい。」
「うるさい。」
「いつも私ばっか好きで馬鹿みたいだわ。」


私がそう言えば体にかかる重みが軽くなる。
ルッチはまた机に戻って新聞を広げる。
そしてコーヒーを飲む。
私は枕元に小さな箱があることに気付く。
私はそれを開けて嬉しくなって下着姿のままルッチに飛びつく。



「ルッチ!」
「うるさい。離れろ。服を着ろ。」


ルッチは相変わらず新聞から目を離さないしコーヒーを飲んでいて五年も任務に行ってしまう。
でもさっきと全然違う幸福感で私は一杯なのだった。















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