ドンドンと扉を叩く音がする。
折角の休日に、と扉を開ければ名前がいた。
表情を見たところまたルッチ絡みだな、と思う。

「どうしたんじゃ名前。」
「あの男本当どうしてやろかしら。」
「またルッチか。」
お前も大変じゃのう、と言ってお茶を出すわし。
名前は同じCP9のメンバーであり、ルッチの恋人だ。
ルッチによく悩まされ、わしの部屋に来る。


「これで何回目じゃ?」
「回数なんて覚えてない。」
「お前ら本当に付き合っとるんか?」
「愚問よ。」
「お前は他の女とルッチが寝ててもいいんか?」
「いいわけないからこうしてカクの部屋に来てるんでしょうが。」
「ああ、もう、また泣くんか名前。」

わしはティッシュで名前の顔を拭く。
基本的に名前はわしに当り散らすか、泣くかの2パターンである。
最初のうちは厄介だと思っていたが、こんな風にでも名前が頼ってくれるのがうれしい、と思っている。
わしも相当救えない男だと思う。

名前の泣き顔はわしが見てきた女の中で一番かわいいと思う。
こんなことを言えば殴られそうだから言わないが。


「カク、ごめんね。」
「別に構わんよ。」
「私何されてもルッチのことが好きなんだ。自分でも腹立つくらいに。」
相変わらず泣きながらそういう名前。
何でそこまでされてルッチを好きでいられるのか心底不思議だ。
名前がルッチにどれだけ悩まされたか知ってる。
浮気なんかまだかわいい方だと思う。

「…知っとる。」
「嫌いになれたら楽なのに。」
「のう、名前…。」
わしと付き合ったら絶対幸せにしてやる、なんてありきたりな台詞しか浮かばない。

「何?」
「…ルッチとは子供のころからの付き合いだからわかるじゃろ?」
「何がよ。」
「ルッチがお前のこと愛してるからこそああいうことするんじゃって。」
「分かってるよ、ルッチの愛情表現が歪んでることくらい。」
「じゃろ。」
「だからっていくら何でもひどいわ。」
「まあ、そうじゃな。」

わしにしろなんて言おうと思えば簡単に言えるが絶対に言わない。
ルッチが名前に心底惚れていることも知ってるし、名前もそうだ。
ルッチは歪んだ愛情を名前に向ける。
それは愛しているからこそそうなるのだろう。

わしはそれを許せない時期もあったが、今は仕方ないと割り切ることが出来ている。
何だかんだ歳をとっていることをこの二人を見ていると実感するのだ。

もしわしと名前が付き合っていたらどうなっていたかをたまに考える。
何となくうまくいかないだろうと思う。
ルッチと名前が会ってしまった時点でわしは可能性なんてそもそも無いのだ。


ピンポーンと音がする。
1時間半くらい経ったところを見ると行為を終わらせたルッチだろうな。

「あ、来客じゃ。」
「どうせルッチでしょ。」
「分かっとるんなら、お前が出てやれ。」
「…いやよ。」


はあ、お前らは全く、と思わず口から出て笑ってしまう。
お似合いのカップルじゃよ。








あの魔法はもうとけてしまった

0521







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -